松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

火野葦平における、愛の甘さ

池田浩士氏の指摘を記載し確認しておきたい。 火野葦平が「ちぎられた縄」を書いた動機や意図の真摯さを疑う余地など、いささかもない。にもかかわらず、いまの視線で見るとき、この小説(および戯曲)にもまた、火野の少なからぬ作品がはらんでいる根本的な…

杭州難民の惨状

延齢大馬路というのは市中随一の大道らしく、けばけばしい色彩に塗られた高層建築物が立ち並び、戦前には最も繁華を極めていたであろうと思われたが、今は各家とも堅く戸を閉ざし、全く誰もいる様子が無かった。晝(ひる)問は物賣りの支那人や、残飯を貰い…

『花と兵隊』における不等価交換

私たちが杭州に入城したころには殆んど住民の影を認めなかったが、何所からかもう支那人の物賣りが我々の兵営の門を訪れて来た。これは我々を十分に〓(おどろ)かせた。(略)物賣りは殆どんど野菜ばかりであった。竹龍に、野菜、大根、赤い丸い大根、蕪な…

『花と兵隊』と幻の交歓

火野葦平の『花と兵隊』をようやっと読み終わった。難解な小説ではない。兵隊三部作を『土と兵隊』『麦と兵隊』の順に読み、3つ目だ。前二作と違い戦争シーンはほぼない。南京*1に続いて、杭州を陥落させた*2日本軍が、そこの守備をするその部隊に火野の部…

楊海英先生を囲む会のご案内

楊海英先生を囲む会日時:5月26日、土曜日第一部 15:00−16:45 講演・質疑・討論 テーマ「中国文化大革命とモンゴル人ジェノサイド」 第二部 17:00−19:00 懇親会、サイン会 場所:fermata(レストラン、貸し切り、素敵な雰囲気とシェフ…

ウイグル理解の困難をめぐって

scopedogさんからの、新たな応答。 id:noharraさん 独立すべきかどうかについては私にも答えられません。 独立できたとしても大量の血が流されるでしょうし、できる限り少ない犠牲で民族融和できればとは思いますが。 王力雄さんの本を読むと、漢人にとって…

scopedog氏からお返事いただいた

「批判されるべきはいずれかの民族ではなく、民族対立を悪化させた政府」http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120520/1337500752 野原のお返事 すばやい反批判ありがとうございます。私にとっておおむね納得できる理解であることが分かりました。前文の表現が…

ウイグル人は漢人に抑圧されているのか?

世界ウイグル会議(WUC、本部:ミュンヘン)は、5月14日〜17日に第4回世界ウイグル会議代表者大会を、東京で開催した。でその際、一行を日本側主催者が靖国神社に昇殿参拝させた事について、多方面から批判が行われている。 中国現代史研究者の水谷尚子氏…

子安宣邦氏の■昭和日本と中国

大阪( 梅田・アプローズタワー13階・14階・関西学院会議室(梅田・茶屋町口3分))での、子安先生の講義は下記のとおり。今日です!*1 第1回 日中戦争と文学の証言1─『生きている兵隊』 4月20日 第2回 日中戦争と文学の証言2─『麦と兵隊』 5月…

真実ではなく虚偽を提供したい支配者

大阪府・市が補助打ち切りを決めた大阪人権博物館(リバティおおさか、同市浪速区)について、松井一郎知事と橋下徹市長が、大阪国際平和センター(ピースおおさか、同市中央区)と統合し、近現代史全般を紹介する「近現代史博物館」としてリニューアルを求…

永遠にあきらめません(陳光誠)

陳光誠問題については、すでに大手新聞1面などにも大きく記事が載っている。ウィキペディアにもしっかりした記事がある。(自分の再確認のためにも簡単なメモを書いておきます。) 陳 光誠(ちん こうせい、チェン・グアンチョン、1971年生) 大学卒業後は…