松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

2021-01-01から1年間の記事一覧

「反日」をめぐって

http://kusabi.webcrow.jp/gainen/hozyuu/1.pdf#page=6この紙片に、I.Hというペンネームの未知の方の文章が載っている。「反日」という思想についてである。「僕は彼らの「反日思想」に共感した。中、高生ごろ僕が一人で考えていた「日本人であることの罪…

田あるによって生命育つ

『Doing 思想史』 テツオナジタというのは、変な題だし、余り読まれなかった本(2008年みすずが翻訳刊行)かもしれない気がする。今の私の問題意識に響くものがあって、感銘を受けた。 18-19世紀の日本人の形而上感覚・気一元論が、例えば山中の芽生えのエロ…

首都占領は恋愛のチャンス

廉想渉(ヨムサンソプ)の『驟雨』は面白い小説だ。1950年に書かれたとは思えない、とてもモダンな感じ。白川豊による翻訳が出たのが、2019年、21世紀に書かれたと言われてもだまされてしまうだろう。 「フロントグラスをザーザーと容赦なく叩きつける大粒の…

『新女性を生きよ』朴婉緒を読んで

『新女性を生きよ』朴婉緒の自伝3部作の最初。大ベストセラーになった。やっと読み始めたが、とてもおもしろい。*1 彼女は1931年生まれ、開城(松都)近くの片田舎の両班の家に生まれる。その田舎の小村は両班が2軒、非両班が16軒ほどで、農地は村人が所有…

和解のためのパラヴァー(徹底的話し合い)

謝罪は難しい。自分が正しいと思ってやったことを咎められた場合、相手が自分の正しさを主張すればこちらもこちらの正しさを主張し返すことになり、きりがない。だからそういうことは止めよう、と考える。しかしそれでは不正は放置されたままになり、社会は…

差別を禁止しても・・・

https://www.youtube.com/watch?v=rc6qdM4Cv7Y「ミンデル『紛争の心理学』の「反差別主義」を入り口に熱く語る」という、三鷹ダイバーシティセンターの4人による討論がある。ミンデルの本のなかで、「差別をなくすべきとする考え方、は偏見はなくならない と…

テロリストに非暴力を求めるな!

アーノルド・ミンデルの『紛争の心理学』講談社現代新書、はとても興味深い本だった。ちょっと引用、紹介したい。「テロリズムの特徴は、平等や自由を目的に、権力を持たないグループが主流派に対して攻撃することである。主流派に対する手当たり次第で道理…

金達寿の『玄海灘』を読んで

金達寿の『玄海灘』読んだ。良い小説だと思う。古くさい左翼あるいは民族主義的小説として、軽くあしらえるはずだという偏見があった。確かにこの小説は「古くさい左翼あるいは民族主義的」な志を肯定的に描こうとはしている。しかしそれを古くさいとして乗…

『光州 五月の記憶』尹祥源(ユンサンウォン)評伝について

『光州 五月の記憶』は、1980年の光州事件を、若くしてこの闘いに倒れた尹祥源(ユンサンウォン)の評伝という形で書ききったもの。この大きな事件を近付こうとするとき、比較的理解しやすい一つの方法だと思える。 現在の全羅南道光州広域市光山区に 尹祥源…

〈現状態に対する本源的拒否〉の思想

1 黄晳暎(ファンソギョン)の小説を何冊か読んでかなり好きになったので、黄晳暎論でも読もうかと思って図書館を探すと、金明仁(キムミョンイン)という人の『闘争の詩学』副題が「民主化闘争の中の韓国文学」という本があったので借りて見た。第7章が黄…