松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

「読み書きができない中高年の女性」って、日本人のなかにもいっぱいいるんだよ。

「おおさか識字・日本語センター」というところがあるらしい。
http://www.call-jsl.jp/
 このHPをみるとなかなかしっかりしたところのようだ。
http://www.call-jsl.jp/kyousitu/index.html を見ると、
大阪府内に多くの識字学級があることが分かる。すべてボランティアで支えられているものだろう。それに対し例えば○○県ではどうだろう?それほど多くの識字学級はないだろう。だがニーズはないのかというとある。
あることは間違いない。しかし彼らがいてることを確認するのは困難である。それはまあ当然なことで彼らはサバルタンであるのだからわたしたちがわたしたちである限りにおいては、彼らを発見できない。
しかし、彼らはそこにおりわたしたちは彼らに出会っているのだ。私たちが気づかないだけで。

 私はまず、新しいオモニにお名前をお伺いしてみました。すると、オモニは「Nと言います」と通名をおっしゃれたので、
(略)
 お二人に文字を書いていただきながら、私は、I(錦)オモニの書かれる文字を注意深く見つめていました。I(錦)オモニは、プリントを見ながら、ゆっくりとノートに文字を写されました。それを見た私は直感的に、I(錦)オモニが、ほぼ初めて日本語を学ばれる方なのではないだろうかと思いました。
(略)
私は続けて「夜間学校にも行かれたことはないんですか?ここのハッキョみたいな、識字学校も?」その質問にもI(錦)オモニは、また同じように首を横に振り、弱く微笑まれました。私はI(錦)オモニが一度も学校へ行かれたことがないということを聞いて、そうだろうとは直感しつつも、なぜか心が焦ってくるのを感じ、たたみかけるようにまたI(錦)オモニに聞いてしまいました。「でも、オモニ、上手に字かけてはりますよ。どこで、覚えはったんですか?」

 すると、I(錦)オモニは静かに答えられました。

「この字は全部『拾った』ものです」

 

 その言葉に私は、突然、それまで焦っていた心に急ブレーキをかけられたような、そんな強い衝撃を覚えました。

 モジ ヲ ヒロウ ?

 この、不思議な言葉の取り合わせ。出会わない言葉どうしが組み合わされているように思える言葉のつなげ方。でもこの言葉こそが、文字を「学ぶ」のではなく、一生懸命に「拾って」こられたI(錦)オモニの「生」を、もっともよく表しているのではないかと思われ、私はもう次の言葉を継ぐことができませんでした。なんて切ないセンテンス。文字を、言葉を、世界を知らないのは、私のほうだ。
http://d.hatena.ne.jp/F1977/20080429/1209459161

 小学校に行って初めて字を習うのは当たり前である。それ以来わたしたちは(日本語の)字に溢れた社会をある部分について疎ましく感じることはあっても字が溢れているということ自体には違和感を持たずしたがって〈字が溢れている〉という感覚は持てないで生きている。それは当たり前のことだ。
 身体的に私たちの〈当たり前〉を欠くひとたちは身体障害者名付けられ、わたしたちは戸惑いながらも彼らとの付き合いかたを学ばなければならないと考える。言語的に私たちの〈当たり前〉を欠くひとたちは何と名付けられているのか。わたしは知らない。
 しかし彼らがそこにいる以上、彼らに呼びかけ、彼らに〈来てもらう〉ように呼びかけるべきではないか。
 呼びかけなければ彼らは現れず可視化されない。その方がお金を使わなくともすむ、それは確かだろう。
でもそれは良くないと思う。

 2008年4月11日に、大阪府橋下徹知事直轄の改革プロジェクトチームが発表した「大阪府財政再建プログラム試案」において、「識字推進事業」が2008年8月以降は廃止という考え方が示されました。

 現在、大阪府内には約220の識字教室や日本語教室が開設されており、これらの識字・日本語教室では、被差別部落出身者や在日韓国・朝鮮人障がい者、中国帰国者やその家族、外国から結婚や仕事のために渡日した人たちが、近隣のボランティアと一緒に、生活に必要な文字の読み書きや言葉を学んでいます。

 これらの教室では、読み書きや言葉の学習だけではなく、暮らしの中で直面する様々な問題についての相談が日常的におこなわれており、「情報弱者」と言われる人たちにとって、社会参加・自立・自己実現のために必要な場となっています。
http://sociologbook.net/log/200805.html#eid254 から孫引き

 
http://d.hatena.ne.jp/F1977/20080428/1209355389
[オモニハッキョ]声が届きますように という記事を読んでみてください。

表題はきしさんの
http://sociologbook.net/log/200805.html#eid254より。