松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

日本人の血

ところで、小林秀雄『夜明け前』についてこう言っている。

作者が長い文学的生涯の果てに自分のうちに発見した日本人という絶対的な気質がこの小説を生かしているのである。個性とか性格とかいう近代小説家が戦って来たまた藤村自身も闘って来たもののもっと奥に、作者が発見し、確信した日本人の血というものが、この小説を支配している。

少し後に「日本的という観念」という言葉もある。小林は何を言っているのだろう?日本人はすべて狂死すべきだとでも言いたいのか。