松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

イスラム国の背景としての空爆

志葉玲氏の「イスラム国は日米の外交・安全保障政策の失敗が産んだモンスター〜暴走を止めるためにやるべきことは?」という文章をめぐって、
@Mydxb ウム クルトゥム氏と「論争」をはじめた(が、ちょっと休憩している)。
けっこう大事な問題だと思うので、一部を転記しておきたい。


1月26日、@Mydxb ウム クルトゥム氏発言。

?今日は読めました*1。ISがイラク戦争の落とし子である、と言うのは完全には間違いではないですね。特に地元イラクからの同調者はそーです。しかしここまで遡るのなら、もっと本質的に深い地点からの情報収集に基づいた中東、アルカイダ・ISISの観察が必要だと思います。

?本職の性質上、何事にもワタクシのアプローチは実態の情報収集に基づく観察と実情、現実の把握、論理的な分析と考察による推察、予測です。その視点から申し上げれば、情報インテリジェンス収集と奥行きのある分析が不足していると思います。

?世界を動かす巨大な貪欲と歩行する政治と、その物理的なパワーであるあらゆる暴力の犠牲になる人々の生の慟哭を描き伝える事、それが戦場記者の働きであるのなら、それはそれで必要な事ですが、それ以上、それ以下のものではないと言う事は、この記事は確かに示していると思います。

?しかし、ビジネス、経済、政治、外交、政策戦略諸々に関わる者達にとっては、これだけでは不十分なんであります。なぜ、誰がどの様に物事を起こし、どの方向へどの様に動き得るかを理解し、できるだけ広く深いパースペクティブで見抜き、見通す必要があります。〆 

追】自分の思想や主義、研究結果の自説とその擁護、思い入れに立った、怒りの吐露やセンチな気持ちの慟哭などからは離れた観察眼を持つ必要あります。自説を守り堅持する事自体を金銭的、感情的利益となる(している)人達の観察と分析には冷徹さが不足している場合がある様に見え升 

1月27日の野原からの応答。

6. さて、私は「高遠さんの「政治的な、思い入れスタンス発言」より、ウム クルトゥムさんがより冷静な現状把握をしているのか?」という、はなはだ失礼な問題設定をしたわけです。まあ失礼と言えば、高遠さんに対するウム クルトゥムさんの態度も失礼でないこともない。以下長文失礼
7. で仮に高遠さんと志葉氏のイラク情勢把握がかなり近いという仮定条件において、http://bylines.news.yahoo.co.jp/shivarei/2015025-00042538/… を紹介した。ここには、2005年前後の米軍のラマディ攻撃の苛烈さが書かれている。さらにラマディだけでなく、おおざっぱにスンニ派全体に対して
8 「スンニ派だというだけで人々はイラク警察や治安部隊に拘束され云々」といったひどい差別がマリキ政権等によって行われたと、報告する。さらに日本ではほとんど報じられていないが、一昨年末からイラク西部の都市に対し空爆、樽爆弾などの強力な兵器が降り注いでいることも念を押す。
9. 以上のような経過に対して、米国が直接間接に大きな責任があることは否定できない。イラク復興支援に参加した日本にも、米国よりは間接的であるが責任はある。ところが日本ではそのような膨大な被害の報道がほとんどなく、したがって「責任」という問題意識も生じ得ない。
10. 志葉氏の文章をウム クルトゥム氏がどう読むか?「完全には間違いではない」というあいまいな留保である。「もっと本質的に深い地点からの情報収集に基づいた…の観察が必要」も何が「もっと本質的に深い地点」なのか全く分からない。これは言うならば何も言ってないのと同じだ。
11. 具体的な被害者が要求する具体的な加害者の像を描き出すのがジャーナリズムの使命であろう。それに対し「世界を動かす巨大な貪欲と歩行する政治と、その物理的なパワーであるあらゆる暴力の犠牲になる人々の生の慟哭を描き伝える事」これは何だろう?大げさな修辞があるだけで、
12. 具体的な加害を名指すことを、ちょろまかすことだけを目的にしている!
「自分の思想や主義、研究結果の自説とその擁護、思い入れに立った、怒りの吐露やセンチな気持ちの慟哭などからは離れた観察眼を持つ必要」という言葉で自らの立場を弁護している。私が面倒でも志葉氏の
13. 文章を要約したのは、彼が書いている「事実」は、怒りの吐露やセンチな気持ちの慟哭などによってまったく歪められていないからだ。
ウム クルトゥムさんは、「日本には責任があるのかないのか」「イスラム空爆に推進していくべきなのか」という問に、直ちには答えない。
14. 彼女はただ、日本人が見たくないであろう「イラク人の膨大な被害」を強調し「日本には責任がある」とする志葉氏を怒りの吐露やセンチな気持ちの慟哭があるという一点で無視して良いとする。
日本も膨大な経済支援をしたイラクの現状が、「(テロリストからでない加害による)
15.  イラク人の膨大な被害」であるという事実は、普通の日本人にとって心地よい情報ではないであろう。また残虐過ぎる映像も、それがテロリストからでない加害によるものである場合は特に、見たくないものであろう。
16.  ウム クルトゥムさんは「怒りの吐露やセンチな気持ち」の忌避により、見たくないものは見なくて良い、を合理化してくれる!

とりあえず。
(つづく)
続きを書いてないなあ。

*1:志葉玲氏の上記発言を