松下昇への接近

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白馬事件の総括方法

さて「「白馬事件=スマラン事件*1慰安婦だけが存在し、他の慰安婦たちはすべて存在が不確かなものだ」」と「中道右派」氏や(日本の前途と歴史教育を考える会)は言いたいみたいだ。
でもって「白馬事件は一部軍人が起こしたもので、軍〜政府〜天皇に責任はない」と主張する。そのように「日本」の無罪化は果たされる。
で、「一部の軍人論」に対する反論は下記のとおりだ。

この事件の重要な点は、「強制連行」の事実が陸軍省まで伝わったにもかかわらず、慰安婦の幽閉処置を解除しただけで、軍としては何等処分を行わなかったことです。日本軍内ではだれも軍法会議にかけられていません。陸軍刑法では「戦地又ハ帝国軍ノ占領地ニ於テ婦女ヲ強姦シタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ処ス。」とあり、慰安婦の強制連行・集団強姦は、もちろん日本軍の軍規に照らしても大きな罪だったわけですが、まったく処分の対象としなかった所に、慰安婦の強制連行に対する軍の考え方が示されています。 軍は強制連行した部隊・軍人を軍律違反とは認定しなかったのです。強制連行を行ったのは方面軍直属の士官候補生隊であり、逃亡兵でも敗残兵でもない、れっきとしたエリート部隊の組織的行動です。 連合軍のバタビア裁判では、この件で人道上の罪として、死刑1名を含む11名の有罪が宣告されています。組織的犯罪に対する裁判ですから命令されて強制連行に加わっただけの兵士は罪を問われていません。「個人的逸脱行為」は通用しないでしょう。 「希望者だけに限れ」という司令部の命令が十分伝わらなかったせいで、軍に責任はないというのも苦しいいいのがれです。司令部が「希望者に限れ」と命令していたにもかかわらず、その命令に従わなかったのが事実ならば「抗命罪」でさらに重い罪に問われるはずです。しかし、軍はいっさい処分を行わず、この事件に関する軍法会議は無かったのです。

関係者を処分しなかったのは第16軍司令部あるいは南方総軍司令部の判断ですが、第16軍だけが特殊な判断基準を持っていたという根拠はありません。日本軍では慰安婦の強制連行を罪悪とする考えが無かったのです。女性や土人(現地人)を蔑視し、命を捨てる覚悟の皇軍は何をしても許されれと思い上がり、略奪をなんとも思わぬ教育がなされていました。戦争中、女性を虐待して慰安婦にした罪で処罰された人はいません。これは、そのような事をした人がいなかったのではなく、白馬事件の例で見るように、いても処罰されなかったのです。
http://www006.upp.so-net.ne.jp/nez/ian/
ianfu-FAQ

 で、ここで確認しておきたいのは、上記のような安倍首相のあからさまなチョンボに対して日本のマスコミも大衆も批判の声を挙げていないことである。「中道右派」氏や(日本の前途と歴史教育を考える会)もそうである。
  でもまあこれは考えれば当たり前のことである。
すべての慰安婦たちを、白馬事件とそれ以外と二つに分けるなどという常識は日本人にも誰にも存在しないのだから。
 「狭義の強制連行は存在しない」は安倍首相によって3人に対して言われた。撤回されていない。
 このことは少なくとも上のロジック(全慰安婦を二つに分けてから無罪化を企てるロジック)は通用しないことを明らかにしている。

 3人の元慰安婦のうちの一人に対し、「君にはすでに謝ったはずだ」と言うことは、残りの二人に対し差別的取り扱いをする根拠を問われることになる。根拠は前述したように無いわけではない。当時の国際法の植民地住民差別的規定だ。*2
 しかし1990年代に韓国人から提起されたこの問題に当時の国際法の植民地住民差別的規定でもって応えることは、日本政府が大東亜戦争時と同じく今も植民地住民差別的(レイシズム)であると批判されることになる。
  1990年代以降日本国内に拡がった“なかった派”はレイシストであり、〈戦後〉の国際社会の最低基準をクリアーしておらず、「国境」を一歩も出ることができない!*3
(3/19記)

*1:従軍慰安婦』ではp175

*2:中国、朝鮮以外の人はインドネシア人などはこのカテゴリーに入らない?

*3:米国のイラク占領もレイシズムであり弁護できないが、力が強いので一部の奴隷(日本)は支持している。