松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

地下核実験のトンネルは誰が掘ったのか?

2009.5.25北朝鮮核実験は、 吉州付近の地下で 行われたとされる。
このことについて、原 良一さんが、CML(伝統ある左翼系MLであるAMLの後身)に5月 26日投稿された記事がある。

【北京・西岡省二、ソウル大澤文護】北朝鮮朝鮮中央通信は25日、同国が06年10月に続く2度目の核実験を実施したと伝えた。
報道文は狙いを「共和国(北朝鮮)の自衛的核抑止力を強化するため」と位置付け、「成功した」とした。4月の長距離弾道ミサイル発射に続き、北朝鮮が再び核実験に踏み切ったことで、日本や米欧だけでなく、北朝鮮の最大の支援国・中国を含む国際社会の強い反発は必至だ。北朝鮮の実用可能な核兵器開発は、朝鮮半島の一層の緊迫化を招く。
http://mainichi.jp/select/today/news/20090525k0000e030049000c.html

前回の核実験について、姜哲煥(北朝鮮政治犯収容所の体験者「平壌の水槽」ポプラ社著者)は、次のように述べている。

 姜氏は、北朝鮮で行われた核実験の場所を、日米韓の専門家の分析によれば、実験場所は吉州郡の萬塔山(マンタプサン)だと確定しているが、その後の同地から脱北してきた難民に聞き取り調査を行った結果、核実験に関連しての住民の避難、退避はまったくなかったという。かつ、吉州郡の住民も核実験場がどこなのかを知らない。
 そして、同時に取材の中で明らかになったのが、この萬塔山と気雄峰という山を境として、同地に化城(ファソン)政治犯収容所が一九八五年から存在し、この収容所は最も重罪の、一度入れられたら二度と釈放される可能性のない「完全統制区域」と認定されている。この化城収容所の北側には鏡城(キョンソン)収容所が隣接していたが、この収容所は一九八九年に解体された。

 この鏡城・会寧収容所で警備兵として勤務していた安明哲氏の証言によれば、「鏡城、化城、会寧の三つの収容所で約10年前から多数の政治犯が『大建設』の名の下に萬塔山にトンネルを掘りに行った」という。
このいわゆる「大建設」に動員された政治犯は誰一人生きて帰っては来なかったが、安明哲自身、当時その大工事が何を目的としたものなのか知らなかった、今になって地下核実験場の建設だったと考えれば合点が行くと語った。

 また、会寧収容所に位置した国家安全保衛部第三局傘下の「予審局」とは、生体実験を総括している秘密部署だったが、90年代半ば、化城収容所に移動してきた。姜氏は、この予審局は会寧に位置していた時には生物化学兵器の人体実験を行い、化城に移った理由は放射能被害に対する人体実験を行っていたのではないかと推測する。
[CML 000097]
http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-May/000094.html

 核実験が行われた場所に隣接して化城(ファソン)政治犯収容所がある。巨大トンネル工事は政治犯によって行われたものだろう、という推測である。『大建設』のために巨大な労働力が投入された。で今回やっとそれなりに巨大な政治的成果を得たわけですね。

さて、あまり知られていないことですが、今回の核実験の地震波を検知した施設の一つが、長野県長野市松代にある気象庁精密地震観測室です。この観測室は、あの松代大本営の手掘りトンネルの中にあります。松代大本営…太平洋戦争末期、東京もいずれやられると予感した軍部は、松代の皆神山周辺の地下に皇居や軍部の中核施設を秘密裏に移動させる計画をします。そして、多くの朝鮮人に強制労働をさせ、ほぼ完成というところまで工事を進めますが、結局終戦を迎えます。その地下トンネルの一つに地震計などを設置しているんです。それが不思議と全世界の微小地震波まで感知できる。今や核実験の監視施設としても世界的に重要なものになっているのでした。*1
http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2006/10/post_633c.html

日本のヤバイ巨大トンネルと言えば松代ですね。多くの朝鮮人に強制労働をさせおおきな苦しみを与えました。
この朝鮮人たちが、松代から地下を黙々と堀り進み、ついには朝鮮半島にまで到達するというありえない幻視をモチーフにした長編詩があります。金時鐘の長編詩「新潟」です。
 原 良一さんの話を聞いて、私は金時鐘の「ありえない幻視」が一瞬現在に現実化したかのような錯覚にとらわれました。……戦後64年、くる日もくる日も堀り続け朝鮮半島に入ってからなお、坑道を広げに広げた。そして歴史に残る快挙核実験を成功させた。*2……


松代から地下を黙々と堀り進んだ朝鮮人たちには断ち切られた未来しかない、ということはすでに作品に書きしるされています。
わたしたちは収容所とともに核兵器をも拒否しなければならないでしょう。それとともに私たちの地下の坑道はかってと同じく今もつながってしまっていると、考えるべきでしょう。

*1:この記事の「今回の実験」は前回のもの

*2:我々は/彼らは