松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

男は子どもを作れない?

 (恋愛弱者系/オタク系の男性について)ギャルゲーでヌキながら、性犯罪を犯さずに、平和に滅びていってくれればいい。そうすれば、ノイズ嫌いでめんどうくさがりやの男を、再生産しないですみますから。

 ただし、そうなった場合、彼らの老後が不良債権化するかもしれませんね。ところが、彼らが間違って子どもをつくったらたいへんです。子どもって、コントロールできないノイズだから。ノイズ嫌いの親のもとに生まれてきた子どもにとっては受難ですよ。そう考えてみると、少子化はぜんぜんOKだと思います。(434頁)
上野千鶴子バックラッシュ』 p434

最後の引用なんて、思いっきり優性思想(の裏返し)ではないですか。
(略)
(まあ、ある種の「男」どもは子どもを生むな、って断種思想なんだろうから、ロジカルには矛盾はないんだろうけど)。
(略)
ジェンダーフリーとかバックラッシュとかフェミニズムとか、そういう文脈とは全く無関係に、上野氏の発言は、個人のものとして、全くダメだ。
http://d.hatena.ne.jp/sugitasyunsuke/20060811/p1

 恋愛弱者系/オタク系の男性は自らの志向どおり生きていけばよろしい、子どもを作る義務などに目覚めるな! と言っている。

 観念で子どもを作ることは間違った態度であり、子どもは肉体で作るものだ。少し拡大すればこのような思想に近いかもしれない。確かに女性はいつも自らの肉体で子どもを作ってきた。それに対し男性と子どもの直接的関わりは精子〜受精卵の関わりであり、それ以外は相手の女性との持続的関係の存在を前提とする。
結婚、家族、同棲、対関係といったもの安定的存在は、女性を抑圧するものだ、と上野氏は思っているのか。男性が子どもを作る(関与する)ことそのものを肯定的に(あるいは中性的に)捉えることが上野氏にはできない、ということになるのか?
 恋愛弱者系/オタク系の男性についてではなく、すべての男性において、少子化はぜんぜんOKだということになるのでないか。恋愛弱者系/オタク系以外の男性の方がバリバリ働き家庭を作るという規範的性意識にとらわれているはずだからね。

杉田氏の上野叩きに対しいかがなものか、と思い書き始めたのだが、上野叩きに成ってしまった。(反省)

(なお、バックラッシュという本私は読んでいません、すみません。それについてのブログの議論も。)

追記:
「子どもって、コントロールできないノイズだから。」という発言からは、自己=美意識にとってのノイズを受け止めることを価値とするのだという上野の思想をうかがうことができる。この考え方には賛成である。
上野は「幸せな家庭」イデオロギーを攻撃し、それはもっともと思わないこともない。
私は「子どもというノイズの存在〜誕生」をより大きな価値と考えたい。「家庭より私が大事」イデオロギーは一見もっともらしいようだが、自己=美意識を至上とするのなら恋愛弱者系/オタク系と同レベルということになるのではないか。

以上偏見をあえて書き付けてみた。
(もちろん男性として「子どもを作る」ことを肯定する以上、少なくとも出産以後のすべての育児労働の半分を負担する覚悟が必要なのは言うまでもない。*1

*1:野原の実践は?