松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

懐徳堂研究会からのお知らせ

4月から始まる第4期「懐徳堂研究会」平成20年度(前期)の講座のご案内をいたします。子安宣邦先生による論語講義(『論語』を今読む)の講座は原則的に第3金曜日の夕方に、仁斎学講義(『語孟字義』を読む)講座は翌土曜日の午後に行います。

論語講義:『論語』を今読む

□講師:子安宣邦大阪大学名誉教授)
□趣旨:『論語』にはたくさんの読みが積み重なっています。それは代表的には朱子であり、仁斎であり、徂徠であり、現代の多くの解釈者です。私の考古学的な読みは、後世の解釈として『論語』の上に積み重ねられたものを解きほぐしながら、孔子の最初の問いのあり方をたずねてみようとすることです。

□日時:原則的に毎月の第3金曜日、午後6時30分〜8時です。
□前期(5回)講義日程:
 回   日       程       内   容      会議室
第1回 2008年4月18日(金)  「徳について」   1410階会議室予定
第2回 2008年5月16日(金)  「徳について」     〃
第3回 2008年6月20日(金)  「徳について」     〃
第4回 2008年7月18日(金)  「君子について」    〃 
第5回 2008年 9月19日(金)  「君子について」    〃
     ▽講義内容は予定です。講義の過程で変更されることもあります。
▽会場は関西学院アプローズタワー会議室
     ▽会場・日程変更の場合は予めご連絡します。 

□会場:アプローズタワー(阪急インターナショナル)、関西学院大学 会議室
阪急梅田・茶屋町口下車3分
 地図同封(参照:関西学院大学HP) http://www.kwansei.sc.jp/kg_hub/access

□会費:研究会費として
論語』講座(金)と『仁斎学』講座(土)両方参加の方:前期5回×2講座分7,000円
論語』講座のみ参加の方                : 前期5回分3,500円
講座日によって参加される方               : 1回 800円
*会費は、前期分まとめて講義初回日に申し受けます。また、講義によって参加される方は、参加当日会場にて申し受けます。□テキスト・資料は当日会場で配布します。
■仁斎学講義:『語孟字義』を読む

□講師:子安宣邦大阪大学名誉教授)
□趣旨:初めて儒家における古学の視点を確立した伊藤仁斎の『語孟字義』(上下)を徹底的に読もうと思います。『論語』『孟子』の立場から朱子学的概念を問い直し、読み直すことで仁斎は、どのように新たな学問の地平を開いたのか。仁斎の読解作業を一緒にしませんか。

□日時:毎月の第3土曜日、午後1時〜3時
前期(5回)講義日程
日      回     程      内   容    会議室
第1回 2008年4月19日(土) 「仁義礼智」   河合塾セルスタ53階
第2回 2008年5月17日(土) 「仁義礼智」       〃
第3回 2008年6月21日(土) 「心」            〃
第4回 2008年7月19日(土) 「性」            〃
第5回 2008年 9月20日(土) 「四端の心」       〃
▽会場:河合塾セルスタ5階会議室
▽日程・会場変更の場合は予めご連絡します。

□会場:河合塾セルスタ・会議室。河合塾大阪校S館に隣接した建物。
御堂筋線「中津」下車、4番出口徒歩2分
阪急梅田「梅田」「中津」下車6分
地図同封 (参照:河合塾HP)
http://www.kawai-juku.ac.jp/kosyapage/KosyaTop.php?ks=511

□会費:研究会費として
論語講義』の講座と『仁斎学講義』の講座両方参加の方:
前期5回×2講座分7,000円
『仁斎学講義』講座のみ参加の方             : 前期5回分3,500円
講座日によって参加される方                : 1回 800円
会費は、前期分まとめて講義初回日に申し受けます。また、講義によって参加される方は、参加当日会場にて申し受けます。
□テキスト・資料は会場にて配布いたします。


懐徳堂研究会のご案内
『仁斎学講義』講座終了後、毎回同じ会場で「研究会」を開催いたします。講座参加者は、同時に研究会会員でもありますので「研究会」にも自由にご参加下さい。
以上
 平成20年3月吉日
懐徳堂研究会(代表・子安宣邦
[連絡先]:宮川康子(みやがわ やすこ)
[事務局]:三馬忠夫(みま ただお)e-mail: t-mima@nifty.com

 懐徳堂研究会については始まったときに書いたかも、と思って上の窓に「懐徳堂」と入れて検索するとちゃんとでてきた。ブログはこういうところが便利。
http://d.hatena.ne.jp/noharra/20040515#p1
 第1回は4年前。そのときは本居宣長講座だったがその後、荻生徂徠を経ていまは伊藤仁斎講座となっている。1回800円での参加も可能なのでぜひどうぞ。
ところで、上の4年前のブログで、水戸学派による大日本史に触れ*1こう書いた。

日本人に社会のあり方と人の道の基準を教えるために史書を作るという意志が確立され250年も貫き通され成就したという話ですが、これはもちろんフィクションにすぎません。

 大日本史はフィクションにすぎない。そもそも国家=日本の統一性、永久性というアプリオリ自体はなはだ脆弱なフィクションにすぎない。とそう主張できるしするべき場所はたくさんあるわけです。(例:日の丸君が代強制反対)
 しかし一方では「〜〜はフィクションにすぎない。」という言説自体の問題性を考える必要もあるわけです。
「〜〜はフィクションにすぎない。」という言説はまず第一に、差異を生産することを職業にしているアカデミズムに非常に適合的な言説であること。そしてアカデミズムのすぐ外にあるジャーナリズムやブログもそれぞれのあり方において〈差異の生産〉を基本に動いていること。
わたし、一介の市民がこうしてブログなどで意見を言えることは、大きな潜勢力とその交錯を社会にもたらすはずでした。しかしながらわたしたちの議論はその基準を持たないとき、〈差異の生産〉の平板さにだけ帰着し、グロテスクなシニシズムを平然と謳歌するに至るのです。

エディプスコンプレックスを解消したければ、資本を手に入れればよいのだ。劣等コンプレックスを解消したければ、他人よりお金を稼げばよいのだ。
http://aburax.blog80.fc2.com/blog-entry-183.html

 すべての社会は矛盾と強奪に満ち、それを批判するために正義や真善美という基準が必要です。しかし正義といった基準が失われたからといって失われたものを性急に回復しようとしても無理です。社会の無意識は複雑に構成されそれに働きかける方法論も不明です。


 えーとさっきから話が逸れているのですが、わたしは〈懐徳堂〉という三文字は〈大日本史〉という四文字に対抗しうる原理を孕んでいると言いたいのです。
大日本史〉という原理とは水戸学派の裔が国民道徳論などによってうちたてていった国体主義が、2ちゃんと安部一派によって21世に甦ったものを指します。
懐徳堂〉という原理は、市民が市民自身の欲求によって学び対等に論じあいそれを持続することによって〈何か〉を生み出すことができるという原理です。
http://d.hatena.ne.jp/noharra/20080213#p1で紹介した先月の講演で子安先生が熱く語られた問題です。

孔子は学びの重要性をいっても、教育を説いたりはしません。懐徳堂も町人がみずから学ぶ場であっても、町人を教育する場ではない。近代学校教育制度は学ぶモチベーションを子供から奪ってしまった。学びの復権が必要です。懐徳堂は大学のものではなく、市民のものです。市民の学びの場の復権のために私は「市民の懐徳堂講座」をやっているのです。

 教育によって国家は臣民(市民)を隷属化する。というフーコーのテーゼの正しさはいまのところシニシズムだけに帰着してしまっていました。そうではなく教育の否定は当然別の原理の復権を意味すべきです。フーコーが晩年に発見した自己の陶冶について、ヨーロッパではなく日本の江戸期において*2豊穣な営みを発見できることはいうまでもありません。
 単に教養をつけたいとかいうのではなく、自分と社会のどうにもならなさをどうにかしたいと模索しているひとたちすべてにおすすめしたい講座です。

*1:桂島先生の発表を聞いて

*2:それだけを強調する必要もないが