松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

橋下徹慰安婦発言の構造と批判

 ネトウヨ的なある人*1に対し、慰安婦問題で「勝てるのか?」と執拗に聞いた。対話の結果、その人は韓国人に具体的に向き合った時に相手と論争していくための立論を持ち合わせていないことが分かった。彼に対して「勝てるのか?」と聞いてもしかたないな、とは思っていた。彼はボコボコにされてもへこたれない愉快犯みたいなツイッタラーにすぎないから。*2


つまり、私が「勝てるのか?」と執拗に聞きたかったのは、聞くべきだったのは、@t_ishin こと、橋下徹氏である。

1、問題は「強制連行の有無」ではない。

慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。

 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
http://ianhu.g.hatena.ne.jp/keyword/%E6%B2%B3%E9%87%8E%E8%AB%87%E8%A9%B1

河野談話は上のように述べた。ポイントは1)慰安所での生活は強制的状況下のものであった事、2)それについて日本軍は責任がある事の2点である。さらに、3)慰安婦の募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた、とする。
「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」対象は、主に上記の1についてである。3も対象ではあるが、日本軍が直接は関知していない事例も多かった。(だとしても慰安婦制度のための募集、移送、管理等であるので間接的には責任がある。)2は1について「日本」がお詫びと反省しなければならない理由である。


それに対して、橋下氏は8/24にこうツイートした。

従軍慰安婦について国の強制連行を認めたような93年河野談話に対して実は2007年、安倍内閣は重要な閣議決定を行った。軍や官憲が慰安婦を強制連行したという証拠はないと安倍内閣は2007年に閣議決定した。これが日本政府の見解である。http://togetter.com/li/360692

「軍や官憲が慰安婦を強制連行した」かどうか、というのは、上記3に関わる問題である。したがって、それがどちらに転ぼうが「日本がお詫びと反省しなければならない」対象の事実認識には関わらない。

日本軍が慰安所の運営に関与していたのは事実だ。これは戦争下でしかも施設が施設だから現代社会にあっても風俗店についてはきちんと公が監督している。慰安所について公が監督するのは衛生管理・秩序維持の観点から当然だ。
http://togetter.com/li/360692

慰安所について公が監督するのは衛生管理・秩序維持の観点から当然だ。」ここでも論点が大きくズラされている。論点は、慰安所について公が監督するのが是か非かではない。論点は、慰安所について公が(直接であれ間接であれ)経営するのが是か非か?である。強制を伴う娼館を国家が経営することが許されるはずはない。

いわゆる河野談話について

河野太郎氏のブログに、河野談話についてのQ&A が載った。
http://www.taro.org/2012/08/post-1257.php

慰安婦の募集に強制性があったかどうかについて、河野談話のいうように総じて本人たちの意思に反して行われたのか、本人たちの意思に反して行われたこともあったが、総じて行われたというほどではないのか、本人たちの意思に反して行われたことはなかったのか、で意見が分かれています。

と論点を述べている。この論点について万一橋下側の意見が通っても、「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」の撤回には論理的につながらないという点については書いていない。

読売新聞

 野田首相参院予算委員会で、河野談話を踏襲するとしながらも「強制連行の事実を文書で確認できず、慰安婦への聞き取りから談話ができた」と説明した。松原国家公安委員長は談話を見直す観点から閣僚間の議論を提起した。


 河野談話は、慰安婦の募集について「軍の要請を受けた業者が主として当たった」とした上で、「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった」と記した。


 しかし、軍や官憲が慰安婦を強制的に連行したことを示す資料は発見できなかった。元慰安婦の証言のみが根拠とされ、これを裏付ける調査も行われていない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120829-OYT1T00051.htm

「軍や官憲が慰安婦を強制的に連行したことを示す資料が発見できなかった」事には何の意味もない。
事実をどういった枠組みで理解しようとしていくのか、が大事だねえ。

慰安婦」問題の解決に向けた意見書可決をすすめる会

http://nanumu.blog59.fc2.com/blog-entry-278.html
http://nanumu.blog59.fc2.com/blog-entry-282.html

1991年作成の慰安婦問題ビデオ

http://www.dailymotion.com/video/xmzizy_yy-yyyyy_news
ネトウヨが大好きな吉田清治さんもでてくる。*3
日本人が沢山でてくるが、直接の体験者であり皆、慰安婦には同情的。思想が右でも左でも。戦場で死んでいった戦友とほぼ同様の存在だと考えているようだ。
彼らと比べると、現在のネトウヨがいかに、現実*4をむりやり否認し、実際の慰安婦たちに対し酷い物言いをしているか、よく分かる。

Larry Nikschの日本軍の「慰安婦」制度

包括的にまとめている。
http://d.hatena.ne.jp/honyakusha/20070416

*1:@neon_shuffle

*2:河野談話を作った石原元副官房長官自身が「根拠なし」と認めてるんだけど >質問しますが、「これで喧嘩して勝てる」と思っているのか? 本人の意思に反して慰安婦にされた人がいるのは認めざるをえないという河野談話の考え方、は覆っていない。https://twitter.com/noharra/status/239201183179366400

*3:いやあまともな人じゃないか、私もネトウヨに少し洗脳されていた

*4:70年前の、だが