松下昇への接近

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水素爆発について

水素爆発はただ水素が化学的に燃えているだけなので、水素(重水素)の核融合反応を利用した水素爆弾とはエネルギのレベルが極端に違います。その二つの違いも、明晰には分かっていないのが素人。それでも少しずつ勉強していくしかない。


山崎久隆@劣化ウラン研究会さんの説明。

原子力建屋内になぜ水素がたまったの?

 原発はウラン235やプルトニウム239を核分裂させ、それによって発生する熱エネルギーで水を蒸気にし、その蒸気でタービンを回して発電します。
このウランやプルトニウムは酸化ウランや酸化プルトニウムの形態で使います。セラミック状に焼き固めています。つまり素焼き。直径1センチ、高さ1センチの円筒状態(ペレットという)になっています。
このままだとばらばらになるので、このペレットをさや管に入れます。ちょっと大きめのさや管なのでするする入ります。さや管は中性子吸収反応断面積や強度や加工性能や熱伝導度や耐酸性など核燃料として必要な性質を勘案してジルコニウム合金で出来ています。
燃料被覆管とも言います。原子炉用ジルコニウム合金はとても高価です。
 このジルコニウムは水の中では酸化ジルコニウムの不動態膜に覆われていて安定していますが、高温になると徐々にジルコニウムと水・水蒸気が反応し始め、ジルコニウムが水と反応し酸化ジルコニウムと水素が発生します。
これが最も大きな水素発生原因です。
水を放射分解すれば酸素と水素にわかれますが、今回の場合はほとんどがジルコニウム水蒸気反応で、これは発熱反応なのでさらに温度を高めます。

水素は最上階に溜まる

 水素燃焼及び爆発を起こしている原子炉は1〜4号機ですが、1〜3と4は分けて考える必要があります。


A.まず1〜3号機です。
この場合の建屋内というのは建屋5階に相当し、最上階に当たります。
ここに原子炉内で発生した水素がどうして集まってきたのかについては、次のような推定が可能です。


ます発生した水素は原子炉から主蒸気配管にながれ、圧力逃がし弁で分岐されて地下の圧力抑制室(サブレッションチェンバ)に送られます。ここで水蒸気が水に戻されますので、水素は分離します。
気体の水素は格納容器中にたまることになりますが、この中は通常は無酸素状態になっているはずなので燃焼しません。


しかし格納容器には外部と貫通する配管トンネルや計装トンネルが沢山あいています。さらにあれだけの地震で揺さぶられたので、もしかしたら亀裂が生じているかもしれません。実は格納容器は定期検査中に気密試験を行うのですが、安定しなかったためにデータを偽装した、などという事件が過去に発覚したことさえあります。
その原発福島第一原発1号機です。内部告発で発覚しています。


このように、格納容器をすり抜けるいろいろなルートから出た水素は軽いガスなので最上階にたまり、爆発限界に達した後、偶発的に発生した静電気などで爆発したと考えられます。


B.4号機については、使用済燃料プールが格納容器の外にあるため、ここで発生した水素が燃焼したのならば同様に5階で燃えると思うのですが、実際には4階で燃えたことに驚いています。


使用済燃料プールは通常、使用済燃料を保管し冷却するための設備ですが、今回は定期検査中だったため炉内の核燃料を全部入れていました。その数は合計783体、これだけの燃料が全部吹っ飛んでしまうと1〜3の一つよりも遙かに大量になります。


プールには当然冷却水補給のポンプや配管がついており、さらに循環して冷却をする構造になっています。通常は4.5メートルの燃料の上にまだ4メートル近い余裕があるはずです。しかしこのプールの水が無くなって、燃料が露出し、溶け始めているというのですから、プールの底が抜けたか配管が切れたかでないと説明がつかないと思います。


その結果、4階にプール水が漏出したならば、水と共に水素が入り込み、それが充満して発火したのかもしれません。
いずれにしろ情報は全く隠されているだけでは無く、東電自身も把握していないと思われます。

http://list.jca.apc.org/public/cml/2011-March/008084.html から、2点だけ抜き出して転載した。

化学式での説明

使用済燃料プールで燃料被覆管のジルコニウム
水蒸気中の酸素と反応して水素を出していると思われます。
 Zr+2H2O=ZrO2+2H2


(空気中の酸素との反応では、Zr+O2=ZrO2)

http://list.jca.apc.org/public/cml/2011-March/008102.html より。