松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

劉霞さんを精神的に追い込もうとしている

自宅軟禁続く劉霞さん 「気がおかしくなりそう」

2011年2月19日 朝刊


 【北京=朝田憲祐】昨年のノーベル平和賞受賞者で、中国の民主活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)氏(55)=国家政権転覆扇動罪で服役中=の妻、劉霞(りゅうか)さん(49)が十八日、劉氏と面会できず、公安当局の自宅軟禁が続く状況について「気がおかしくなりそう」と、インターネットを通じ親友に打ち明けていたことが分かった。


 劉霞さんの消息は、昨年十月の平和賞授賞決定直後、親友に「両親が当局の“人質”になっている。彼らの安全のため、所在が分からないようにします」と伝えて以来、四カ月ほど途絶えていた。


 劉夫妻の共通の友人によると、劉霞さんは十八日未明、当局の監視の隙をうかがい、ネットを通じて約三十分、「涙が止まらないの」と苦しい胸の内を伝えてきたという。


 劉霞さんは、現在の生活に関し「ネットの使用は禁止で、外出もできない」と不自由さを吐露。さらに「家族は全員が危険な状態。まさに人質」などと何度も強調し、高齢の両親や親類にも当局の圧力が強まっていることを心配していた。


 東北部・遼寧省の刑務所に服役中の劉氏と「会えたのは一回」とし、授賞決定二日後の十月十日に面会が認められて以降、会っていないことを示唆し「本当に惨めだ。(現状を)夫に伝えることもできない」と訴えた。


 北京の人権活動家は「当局は劉霞さんを精神的に追い込み、いずれ(亡命を拒否する)劉氏とともに出国を選択させ、中国から追放しようとしている可能性がある」と指摘し、当局を批判した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011021902000033.html

(追記:2月20日)
劉霞さんの発言は当局が全面的にコントロールしているので、これだけが漏れてきたというのは、目的があると考えるべきなのだろう。
目的はこの記事にもあるように、「(亡命を拒否する)劉暁波氏とともに出国させる」ことだろう。海外のシンパに同情心を高めることは、そのためのステップになる。
劉霞さんの情況が記事から想像されるようなものだということは、ほぼ間違いがない。しかし彼女が情況の中でそれと強く闘い続けている、平然と、も確かだろう。

一個のオリーブの実は枝に逆さまにかかり
秋の朝を体験しても
成熟を拒む


目がランランと光る女は
夜を昼に継いで連綿と
うわごとを書き続けるけれど
鏡の中の鳥は依然として眠りに落ちている*1

自己の核心と情況の間には巨大な闇が存在する。私は理性的にあるいはおろかしくもそのなかで藻掻きつづけるが、私がここに居て暁波は遠くから帰ってこないという関係は不変である。私は理性的にあるいはおろかしくもそのなかで藻掻きつづけるが、狂気に陥ることはない。
上の詩の一節をこんなふうに解読してみた。これは1997年の詩で、ずいぶん前とも言えるが、彼女は今回またも同じ情況に置かれた。ノーベル賞で海外のシンパが増えた分だけ彼女や他の親族の自由の制限は極限に達している。
私は想像する。彼女がどうしているのかを。


目がランランと光る女は/夜を昼に継いで連綿と/うわごとを書き続けるけれど


彼女のなかの魔女は1年や2年の孤立には耐えて闘い続けるだろう。
一方、中国の自由な公民である彼女の通信や表現、日常生活の自由を当局の不法な制限から奪い返さなくてはならない。

*1:劉霞 p195 「環」ー中国の民主化劉暁波ー 劉燕子訳