S先生の「朝鮮高校無償化除外は民族差別ではない!」
http://h-ayumi.at.webry.info/201009/article_4.html に載っている。
これについて、「朝鮮高校元教師のS氏が書かれたその文章はまさに、血で書かれた文であり、意見の違いを越えて広く読まれるべき文章である。ぜひ読んでいただきたい。」とブックマークした。昨日。
おいそれと引用を許さない文章なので、全文を読んでもらうしないと判断し、普段twitterでも抜書をよくやるのだがリンクだけに止めた。ところが、思いがけない形で話題にしてしまうことになった。*1
こちらであらためて紹介してみる、私なりに。*2
S先生って本名はちゃんとリンク先に書いてある。わたしに本名を書く権利があるとも特段思えないのでS先生と呼ばせていただきます、すみません。*3
この文章の重さは、表現の外にある。というか書かれた文章だけを表現とみなすのではなく、実存が抑圧(スターリニズムの)に抗して発表したその〈表現過程〉にこそ意味がある。「この文書を明らかにされるということは、Sさん本人だけではなく、北に居る家族の命が危険にさらされます。 短い文書であっても、苦渋の選択であることを十分に御理解して頂きたいと思います。」と転載者は註記している。
さて、S氏は語る。
さる三月、橋下大阪府知事が大阪の朝鮮学校に出している外国人学校振興補助金の見直しを述べ、「民族差別だとの声もあるが、朝鮮民族が悪いのではない。北朝鮮という不法国家が問題だ。それはドイツ民族とナチスの関係と同じだ」。知事はまた、「朝鮮学校が、不法国家の北朝鮮と結びついている朝鮮総連と関係があるなら金は投入できない」と表明した。
総連中央は、この「ナチス発言」が同胞たちのなかでどのように受けとめられているのかを知っているのだろうか。
その後、大きな声では話さないが、下部の幹部や保護者たちのなかで聞こえてくる本音は、「知事が本当のことを話してくれた。胸がスーツとする思いだ」との声であった。
子どもを朝鮮学校に通わせながらも、心ある保護者たちは「総連教育」の実態を見通しているのである。
http://h-ayumi.at.webry.info/201009/article_4.html
「下部の幹部や保護者たちのなかで聞こえてくる本音」としてS氏が伝えるものを信じるなら、学校あるいは教育内容のあり方についての総連の保護監督(あるいは収奪)について、彼らは感謝どころか反発を感じていることになる。
「朝高生がかわいそう」という理屈で朝高を支援することで、現在の「総連−朝高」の権力関係を維持するのが正しいことなのか疑問を持ってしまう。
なんと大阪の朝鮮学校は十年ほど前から、年間一億九〇〇〇万円もの支援金を大阪府からもらっていたとのことである。それは大阪十数校の朝鮮学校の年間運営費のほぼ四〇%にあたる大金だと言われている。(略)
学校関係者はいうまでもなく、総連中央と大阪本部は、知事の質問に対処するための「台本」まで作成し、暗記までしての面談(談判)となったが、知事の言は、1)朝鮮総連との縁を断て、2)金日成と金正日の肖像画をはずせ、でないと金は出せないというものであった。(同上)
2)金日成と金正日の肖像画をはずせ、は大したことないからすぐできるだろう。1)朝鮮総連との縁というのも、別に日本で言えば教育委員会との縁のようなものだからなくても別にどうということもない、と思う。
朝鮮学校が、総連と関係を断つことはできない相談である。
朝鮮学校教師の人事権は総連が握っている。いや金正日が握っている。高校の校長は総連中央だけでは決めることはできない「総連の大物幹部」なのだ。高級学校の校長は総連の中央委員であり、北から見ると「信じるべき教育革命家」である。
知事と対面した大阪朝高の校長・金淳竽は、総連中央から派遣されてきた人であるし、この四月には総連中央の教育局長として戻っている。また、理事長の辛正学は、近畿と北陸地方の総連県本部の委員長を歴任した「筋金入りの」総連幹部であり、(略)
高校の校長は総連中央だけでは決めることはできない、金正日が握っている、というのはかなり意外な事実。日本では高校の校長など何の権威もなく国家権力との直接の関係などないからだ。
総連は、今年の初めにもった中央委員会第二一期二五次会議で、「…民族教育事業を活動の重要な柱、愛国愛族運動の第一の課題として捉え組織的な力量を傾けなければならない」としている。学校は即総連であり、総連はまた学校である。縁を切ることなど、はなからできない相談である。
私は事情を知らないから「できる」と思っていた。ただ現場の生徒や教師が総連との強い関係などいらないと、思ったらどうなるのだろう。日本における教育委員会のつまらない管理が不要であるのと同じに、朝高においてもいらないのではないだろうか?
私が教師になりたてのころは、子供たちを教えるよりも子どもたちとともに自らの民族的な自覚を高めた時期でもあった。しばらくすると李舜臣将軍や乙支文徳将軍の肖像画が、学校から下ろされた。そして金日成とその一族の「歴史」を子どもたちに教えるようになった。
総連第八次大会(一九六七年)で金日成を絶対の神として崇めるようになった決定は、朝鮮労働党第四期一五次中央委員会の決定に従ったものであった。こうして学校教育の場も金日成絶対化の場と化していったのである。
子供たちの日課は金日成を讃える歌から始まり、金日成の幼いころの歴史の暗唱、肖像画を早朝登校して磨き清めることを強要する教育になっていった。この度数は学年があがるほどに高められた。すべての学校にまるで神殿を思わせるような「金日成元帥の革命歴史研究室」が設けられた。金日成の革命歴史科目は、初級学校から大学まで必須科目であり、偶像化教育はこれでもかこれでもかと教え込まれた。
年配の人たちは、日本帝国主義時代のあの異常なまでの天皇崇拝のことを想像してもらえば手っ取り早い。
1967年まではまだましだった。日本では20世紀までの方がまだましだった、と言えるかもしれない。教師が多方面から監視強化され子供ものびのびから遠く萎縮しているような気がする。ただ朝高の場合、「金日成の幼いころの歴史の暗唱、肖像画を早朝登校して磨き清めることを強要する」でありまさに戦前の天皇崇拝。国家としては許されないと思う。
「党の唯一指導体系の確立」―要は、金日成を神として崇め絶対化・神格化するために、学校の教員たちは、延々と続く思想総括(自己批判、相互批判)に組み込まれていった。朝鮮大学では自殺者が出るほどのおぞましい総括(リンチ)が続いたりした。
朝鮮大学はいうに及ばず、朝鮮高校では、朝鮮革命と総連の核心分子育成のための特別カリキュラム(熱誠班と言う名の秘密に満ちた組織)が組まれ、朝鮮青年同盟から派遣された指導員(表では教師)が、これを直接指導した。先鋭的な特別思想教育と空手の猛訓練で総連の「尖兵」を養成していった。
そこには、総連幹部の子弟と一部「出身成分」のよい優秀な生徒が選ばれた。そのなかから朝鮮大学へ進む生徒は、特別給費生(特待生)となり後に総連幹部の中枢を構築していった。
朝高〜朝鮮大学というシステムのなかで、全体主義の思想教育が行われた。これは過去の話なので現在どうなっているのかが知りたいところ。
このように養成された熱誠分子のなかから、少なくない者が北の対南工作要員、または補助工作員となり、韓国に潜り込んで破壊工作をしたり日本人拉致に直接手をかしたりした。
工作員に成る人もいた。
実に簡単明瞭、総連の会員同胞に聞いてみることである。「ウリハッキョ(朝鮮学校)はつまるところ、金父子崇拝の思想教育をしていますね」と。誰もが否定しないことだろう。
S先生がこう言っているのだから「同胞」はそう思っているのだろう。しかし日本人が突然尋ねてみてこう答えるかどうかは分からない。相手を警戒すれば本音を吐かないし、日本人に身内の恥をさらしたくないと思うかもしれない。
いままだ総連に残っている在日同胞や学父母たちは、北朝鮮や総連となんらかの利害関係のある人たちだけである。朝鮮学校の生徒たちのほとんどは、一般同胞の子弟たちよりも総連幹部・組織関係者の子弟たちだという厳然たる事実を見逃してはならない。
朝高が変われない理由としては、メンバーが総連と深く関係している人ばかりだ、ということもある。
RENKの李英和先生は、去る三月一一日の記者会見で朝鮮高校が民族教育を隠れ蓑にして、本当は北朝鮮の公民教育・金日成崇拝教育を行っていると指摘し、高校三年生の「現代朝鮮史」(一六一ページ)は、金父子の写真が二九回使われ、二人が言及されている箇所は、一年〜三年生用では計三冊で三一一回もあるとした。
翻訳された「現代朝鮮史」(1〜3)による教育内容批判。これについては、朝鮮高校の現代史教科書は何を書いているか(萩原遼氏による教科書批判、朝高生へのメセージ、緊急アピール等)が詳しい。
◦「朝鮮高校の卒業生のなかから日本人拉致や韓国での破壊活動に従事する者が少なからず生まれていることも、こうした教育と無関係ではない。このような機関に日本の公費をつぎ込むことは犯罪に手を貸すことになる」
◦「われわれの立場と行動は、朝鮮高校生を差別するものではない。真実と平和を愛する子どもを育てるという普遍的な理念から出発するものである」
萩原氏たちの主張(一部)。
朝鮮学校では(略)。毎年増え続ける韓国籍生徒の実態は、私がいた時から秘密であった。総連は組織をあげて「朝鮮籍死守運動」を続けてきた。だが韓国籍の子は増えるいっぽうだった。
東京朝高では四九%の生徒が韓国籍、大阪朝高は六二%が韓国籍、という発表が為されたとき皆が驚いた。朝高は愛国教育の場、したがって朝鮮籍の人が行く学校だと外部の人は思っていたから。自身の恥になりそうなこういう公表をしたのはもちろん無償化獲得のためである。
韓国籍の子どもが多いときくと、一般の人びとは、朝鮮学校には韓国籍の子どもも入っている。だからかなり中立的な民族学校と感じる。それをねらって五〇%が韓国籍だと公表した訳である。
「朝鮮籍」はかって60万在日の過半だった。
ズバリ、いま「朝鮮籍」は、特別永住権者(戦前から日本に住む在日とその子孫で、約四一万人)の一割しかいない。(略)
また、毎年「朝鮮籍」を投げ捨て韓国籍に切り替える人びとが五〇〇〇〜六〇〇〇人にのぼるという。このまま進むと、今後数年間に「朝鮮籍」の同胞は一〜二万になってしまう。
朝鮮学校は一九七〇年ごろは、日本全国に一五〇余校四万人近い生徒数であったが、いまは七〇校、生徒数八〇〇〇人台に減少した。総連は年初から鳴り物入りで「学生引人事業=募集運動」取り組んだが、今春の生徒数は八〇〇〇人を切ったとも言われている。
高校生というは360万強。(うち八千というとコンマ2%くらいの人数である。誤り)うち1900人というと0.05%くらいの人数である。 その割には、今年になってのマスコミや各種運動などの量は多い。*4
その理由は二つある。朝鮮半島との関係、なかでも国家でない国家北朝鮮との関係の清算できなさが、政治的というより思想的に大きな問題として残っているということ。もう一つはそれを利用して、親北朝鮮勢力が全力で良心的市民の獲得に勢力を傾けたということ、の二つだ。
決して看過してはならないことは、朝鮮高校では金正日の日本人拉致犯罪を、どのように教えているかということである。
二〇〇二年、小泉純一郎元首相が訪朝したのは、「日本の反共和国抹殺政策がうまくいかず危機にひんしたので訪ねてきたのだ」と教え。教科書には「朝日平和宣言(平壌宣言)以後、曰本当局は『拉致問題』を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々前に繰り広げた」と書き、なんの反省も謝罪もない。
四月二十五日、都内で開催された拉致被害者家族会などによる「国民大集会」で中井大臣は、「無償化による国の支出が朝鮮総連から、金正日の懐に渡る。拉致を行った国に金を出すな」とアピールした。(略)
すでに暴かれた事実だが、金父子と総連の関係は、収奪者と「忠誠の献金者」の関係でもあるのだ。在日商工人と「帰国同胞」を人質にした金品の収奪、同胞が血と汗で建設した学校や会館を売り払っての莫大な献金、朝鮮信用組合(朝銀)から収奪した莫大な金を、総連中央はせっせと金正日のもとへと貢いできた。
金正日は、またもや子どもたちを人質・ダシにしてお金を、日本国民の税金をすいあげようとしているのだ。
「拉致を行った国に金を出すな」というアピールは、私には訴えない。日本のナショナリズムに訴えることは、それに対抗する北のナショナリズムの権利も認めざるを得なくなる。そうではなく、北の大地で死んでいった餓死者たちの無言から直接告発したい。
昨今、総連は組織をあげて適用要求の運動を展開している。生徒たちまでかりだしビラまききにおおわらわだ。いつものように日本人を取り込んでの集会や要請運動を続けている。
総連はいつも、自らの代弁者を作り上げ、その力を利用して事をはこんできた。そして、それを巧妙に行ってきた。日本の政党や一部のジャーナリスト、そしていわゆる「進歩的な人士や市民運動団体」をとりこみ、それを前面にうちだして運動を展開する。
ざっとみただけでも、朝鮮戦争はアメリカがおこした、大韓航空機墜落は韓国の自作自演だ、日本人拉致はなかった、というあんばいである。朝鮮学校問題にあっても、一九七〇年代の「外国人学校法案」反対運動、このたびの高校授業料無償化適用「運動」など、いつも「よき理解者」[ありがたい支援者」を前面に出して「闘争」する。
数年前から、盛んに日本人による「朝鮮学校を支援する会」や「友の会」をつくりあげてきたが、このたびはこれらが繋がり、要請運動や集会・デモを行っている。そこに朝鮮人がサクラになって参加しているという。
そして、「高校無償化」から朝鮮学校排除に反対する連絡会なるものを、朝鮮高校のある地域でいっせいに立ち上げ世論を喚起させようとしている。そこでは「朝鮮学校への差別はゆるさない」が基本スローガンだという。
私は言いたい。何が民族差別なのか!
圧倒的に不法な国家が、過去の被抑圧者としての立場を拠り所に長年培ったテクニックを使って、良心的市民の善意をまんまと獲得する。これは米国におけるイスラエル・シンパのやっていることだが、総連も同じであるようだ。
私が日を重ねるごとに感じ入る言葉、「朝鮮民族が悪いのではない。北の不法国家が問題だ。それはドイツ民族とナチスの関係と同じだ」との言葉である。そして、朝鮮学校訪問時に「君たちが悪いのではない。大人の問題なんだ」と、子どもたちに語りかけたと言う橋下知事の言葉のなかに、政治家としての主権意識と北の人びとに対する人権的配慮に胸をあつくするのである。
朝鮮人学校を支援してくださる心ある日本人の皆さんに申し上げたい。どうか北の金正日政権と、その忠実な下僕・朝総連、朝鮮学校の本質から眼をそらさないでいただきたい。独裁者・金正日と平和を語り、人権を語り、善隣友好を築くことが出来るとお思いですか。とんでもないことです。
一般に左翼は橋下知事を極端に嫌っている。私もまあそうだ。ただここはそれは置いて、生徒のことだけを考えよう。S氏の言うように朝高が独裁国家に忠実な臣民を育てるための高校なら、「それを是正しなければ公金は出さない」というのは間違ってはいない。
朝高がなくなった場合、日本の高校が排外主義的でないのかどうか(日の丸を強制しないか)もチェックしなければならない。
朝高が生徒にとってのびのび過ごしやすい高校なのかどうか。萩原氏たちが言う「現代朝鮮史」私も一冊だけ買って読んで(めくって)見たがやはりかなり違和感がある。金正日賛美などいらないと思う。
1900人しかいないのなら金額的にはしれたものだ。それで北当局のご機嫌がよくなるなら、安いものだと外務省なら考えるかもしれない。だが国家を前提にしそのバランスを第一に考えるだけではダメだろう。北朝鮮においては下層大衆が何十年経っても餓死線上から抜け出せないのは何故か、朝鮮学校なら生徒にとってよりより学校を、という視点から新たに考え直すべきだろう。人数が減って今までの学校数を維持できないなら、日本の高校内で朝鮮語教育を受ける権利の獲得という方向も追及されるべきだろう。
最後に野原がtwitterでした発言を(冗談が入ってますが)載せる。
noharra発
@motogao宛 連続ご容赦。是非言っておかなければならないことは、私や萩原遼、三浦小太郎などは「広義の朝鮮学校」についてそれをツブせとは全く思っていないむしろ拡大強化を願っているということです。広義の朝鮮学校とは朝鮮語の教育を中心にし、北共和国への忠誠はなしにするという意味です
@motogao宛 でこの広義の朝鮮学校には大きなビジネスチャンスが広がっています。小学校の時から中国語を教え込む神戸の中華系学校は日本人にすごい人気です。友人の子もそこから阪大へ行った。普通に大学を出ても食べていけるかどうか分からない現在、高卒の時点で朝鮮語ができる利点は大きい!
2010-09-11 11:42:31
参考:@motogaoさんをはじめとして何人かの(主に在日の方と)twitterでおしゃべり(喧嘩に近い?)をさせていただいた。その記録の一部が下記。
朝高教科書と生徒の学ぶ権利 (教科書はおかしいか 前題3)
朝高教科書は生徒の学ぶ権利を侵しているか?
*1:http://twitter.com/toshi_fujiwara/status/24921065849 http://twitter.com/noharra/status/24921389820 以下
*2:まあ私は紹介は苦手である。読者に分かる文章を書くのが良いことかどうか私は疑っている。togetterというのをやってみたのだが読者にうけるそれは、読者にとって既知の地平で論争が修辞的にだけ激しく行われるものだ、ということが分かった。
*3:彼の実存と対等に切り結べないという負い目の表現だろう。参考 http://members.at.infoseek.co.jp/noharra/dai.htm
*4:文科省によると、幼稚園から高校の各段階の学校は全国で計73校(児童生徒約8300人)あり、そのうち高校段階の「高級学校」は11校(休校1校、生徒約1900人)。学校教育法上は一般の小中高校ではなく、各種学校に位置づけられる。 http://logsoku.com/thread/kamome.2ch.net/newsplus/1268340380/0