松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

なぜ共産党はいまだに中国を統治しているのか?

東京大学駒場キャンパスで、フランス・プロヴァンス大学のンゴ・ミン−ホアン・ティさん(中国現代史、中国政治)*1が、“Why Does the CCP Still Rule China Today? A Historical Perspective”という講演をした。
http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2010/07/report-why-does-the-ccp-still/ をすこし引用したい。

前半、中国革命時の農村での「合成的な革命のプロセス」に注目するということだったようだ。

共産党革命以前、農民は、共産党的な価値観を共有していなかった。そこで、共産党員が農村に派遣され、農村内の個人と協力することで、共産党は農村の草の根まで浸透したという。これはだいたい1940年代から1970年代までの間に完了した。ここで重要なの点として、農民はただ受動的だったわけでなく、積極的だったことが指摘された。

毛沢東時代において、中国は国内的には一定程度民主化された。勿論、ここでいう「民主化」とは西洋的な人権重視の視点を含まない。農民の権利意識の高まりにより、農村における一種の自治機能が強化されたという。1980年代に始まった農村の委員会における選挙は、草の根の民主主義の発展を促した。

西欧的民主主義、人民主権に基づく民主主義とそれは違うと語られるわけだが、人民主権では中国政治を批判する軸にはならないのでは?

また、農村委員会における選挙のようなシステムが大都市や中央政府にも適応されるか、といった民主主義に関わる問題が議論された。
西洋型民主主義という概念の意味をといつつ、文化大革命の意義をより吟味するべきではないかという興味深い指摘もなされた。

中国革命の意味を問うことは、民主主義とは何かを問い直すことだというのはこのブログの最近の問題意識と同じだ。

*1:ベトナム系フランス人