松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

甑山(ジュンサン)教化所での飢餓と死

甑山(ジュンサン)教化所*1というのは刑務所に当たる施設で、中国で逮捕送還された奪北者なども入っています。「教化所の中では、十分な食料が与えられないまま強度の高い労働が強いられ、収容者の多くが栄養失調状態だという。p106*2

初めは、人が死ぬのを見ると恐ろしかったんですよ。ところがあまりにもたくさん見るようになって、日に二、三名が死んでいくのを見ることもあって、それが普通になっていきました。p109同書

問 撃ち殺すのを見たことはありますか。
答 はい、あります。私が入った次の日かな。18歳ぐらいの若い女の子が逃げようとして撃ち殺されました。教化生でしたが、なんと死体を吊るしておくんですよ! そして(収監者を)一列に並ばせて、その前を通過させるんです。p100同書

飢餓のためカエルを食べる話。

畑仕事をしながら、警備の目を盗んで、その場で捕まえて生で食べます。
見つかったら殴られたり罰を受けます。カエルは秋のには毒があるから、皮のあるままでは食べられません。春のカエルは地下から出てきたばかりなので、寄生虫もおらず皮のまま生で食べられます。秋のカエルは、私も食べてみたけれど皮がとても苦いんです。皮を剥ぐには力が必要で手では剥げないので、歯で噛んで一気にペロリと剥ぎます。苦いのは毒があるからだそうです。女たちも食べますよ。皆よく食べていました。p108同書


教化所は日本の刑務所のように閉じ込めておくのが目的ではない。収容者に強制労働をさせることによって農業生産などさまざまな収益を上げることを目的とする産業施設とむしろ考えるべきとのことだ。土木や建設工事現場に日常的に拘留者を派遣しており、人夫の派遣料をとることもある。*3

*1:甑山は平壌の真西、黄海に面した町

*2:リムジンガン4号

*3:cfp110,111同書