松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

ごく当たり前の人権問題として

考えればそれで良い、と野原は思う。

 中国の文芸評論家で詩人の劉暁波氏の初公判について、メモ書き程度だが簡単に触れておいたほうがよいだろう。インターネットに意見を公開しただけで国家政権転覆扇動罪に問われ、懲役11年の求刑となった暗黒裁判の結果もだが、ごく当たり前の人権問題というよりも、「習近平国家副主席訪日の意味は何だったか、その後の文脈から見えてくるもの: 極東ブログ」(参照)に関連した文脈のほうが重要な意味をもちそうだ。
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/12/post-6c80.html

劉暁波とは何か?その核心を「インターネットに意見を公開しただけで国家政権転覆扇動罪に問われ、懲役11年の懲役*1となった暗黒裁判」と短くまとめた、能力はid:finalvent氏のものだ。
それは、わざわざ人権宣言の日にあわせて発表された「08憲章」の思想に言及しないところに特徴がある。実際、日本人が「08憲章」の思想を論じるのは困難だ。それは「08憲章」が高度過ぎるからではない。「08憲章」は教科書的であまりに当たり前であるので、短くウィという以外の反応はできない。*2

なぜだ。なぜ彼だけが国家政権転覆扇動の容疑者であるのか。当局は彼の何を恐れているのか。彼が「08憲章」の起草者あるいは提唱者であるからではない。ましてやその署名者であるからではない。当局が恐れているのは劉暁波リュウシャオボ)が背負っている六四事件の数知れぬ死者たちである。
*3

子安宣邦氏が苦しげに告げるその真実をfinalvent氏は無視する。

今年のノーベル平和賞オバマ米大統領ではなく彼が受賞すべきだったとの評価は多い。

代わりに彼が口にするのはこうした噂だ。まあ、劉暁波が日本国内でまったく知られていないが、海外の文化人の間ではそうでもないことを紹介するには、分かりやすい話題だが。

 オバマ米大統領が訪中した11月、劉氏が釈放されるのではとの期待が人権活動家たちの中ではあったが、オバマ氏は首脳会談の場で人権問題に踏み込まず、「中国側は米国が強硬には出ないという確信を得た」と北京の外交筋はみる。その後、1カ月足らずで起訴され、判決まで進んだ。
http://www.asahi.com/international/update/1227/TKY200912270078.html

 オバマ大統領訪中の成果として発表された米中共同声明では、両国が地球規模の課題に協力して取り組むことが強調されたが、アメリカ国債の最大の保有国となった中国とアメリカの新たな力関係を印象づけ、アメリカはかつてのように中国の人権問題に対する直接的な言及を避けた。
http://www.shukousha.com/column/oikawa_009.html

大国化する中国の顔色をうかがう米国などが、人権問題に対する批判をゆるめている現実がある。
http://sankei.jp.msn.com/world/china/091225/chn0912252029006-n1.htm

まあ中国と米国の国家同士の力関係という大きな問題が、劉暁波という一人の個人に関わるとは奇妙ななりゆきでもある。
それに対して日本はどうかというと、何も発言していない点で、欧米にはるかにおとり異常ですらある。この背景には、「李克強と懇意な関係を築いてきた小沢氏の、事実上朝貢*4 といわれる親中国の小沢氏の影響力があるのかどうかは不明だが。


で、あたりまえのことは、「インターネットに意見を公開しただけで懲役11年」は、言論の自由に反し、ひどすぎる、ということである。オバマが何とかしてくれなかったら、ではなくこれは本来市民運動の課題であり、わたしたちが力を作れなかったことをまず反省するしかない。

 昨年末に出た判決は懲役11年である。暴力を振るったわけではなく、人に危害を与えたわけでもない。そんな言論活動への対応としては暴挙と言わざるを得ない。
(略)
 しかし、政治的信条を平和的に表現することを罰するのは、中国も署名した「市民的・政治的権利に関する国際規約」(国際人権B規約)の精神に明らかに反している。
http://www.asahi.com/paper/editorial20100108.html#Edit2

 日本の民主党指導者は胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席らとの親しさを誇る。劉氏が最近控訴したのを機に、かねてから主張してきた人権の改善を強く求めるべきではないか。
(同上)

「日本のマスコミの中ではいちばん親中共だった朝日新聞」と揶揄され続けてきた朝日も声を上げている。