松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

金正日は権利を持つか?

http://d.hatena.ne.jp/hippie/20090731/p1
日比野さんの下記記事について次のようにブクマコメしたところ、丁寧にお返事いただいた。ただ誤解はあるようだが。

id:noharra 北朝鮮国家は自国民を抑圧している国家であり、その国家を保全する権利を「我々」が尊重する必要などない!! 一方国際政治という土俵ではかの国も国家として他の国家と対等の権利を持つ。ひっぴいともあろうものが 2009/08/01*1

* 共和国の収容所の話などを聞くと、共和国にも問題があることは事実ではないかと私も思っています。

* もしid:noharraさんが「人民に対する抑圧を行う国家全て」に対して、尊重しなくても良い、という態度をとられるのであれば、それは一貫しているように思います。しかし、拷問・虐殺を始めとするひどいことを世界中で最も多く繰り広げている米国政府(被害者の数は共和国での被収容者を遙かに上回ります)に対しては、国家や政府としての存在を尊重する人がほとんどです。そこに二重規範はないですか?何故、北朝鮮の政府の主張にだけは、耳を傾けなくてもいいのですか?

 拷問・虐殺を始めとするひどいことを世界中で最も多く繰り広げている米国政府について国家や政府としての存在を尊重するのなら、それはダブスタだという意見。なるほど。
 イスラエル国家については、民主主義の政治体制の国であることを考えに入れた上でなお、彼らの多様性が一貫したパレスチナ人民の抑圧を覆しえない明白な盲点の上に存在しているものに過ぎないと判断し、国家や政府としての存在を尊重しないという考えに立ちうると思う。
 で米国ですが、「拷問・虐殺を始めとするひどいことを世界中で最も多く繰り広げている」という判断に主観的には賛成します。しかし、国際法違反とかそういった形で普通の人も理解してもらえるきっちりした常識に反しているというのは難しいでしょう。(グアンタナモ収容所を除く)戦争とか占領とかいう形を取っているため、その不正を国際法違反と明白に位置付けることが難しいのです。
 北朝鮮国家は世襲独裁国家で人民には一切の政治的自由がなく、おまけに経済的にも崩壊した国家です。それでも国家であるだけで、膨大な権利を持っているのです。この人民と国家の間の圧倒的不正に視点をあわさずに、国家と国家の間の猿芝居においてそこに対等性が欠けているから「耳を傾けなくてもいいのか」といった問題意識をもつのは、根本的にピントはずれです。

それは、人工衛星の打ち上げの問題とは別に、共和国政府に対する批判や抗議として行われるべきものです。

 北朝鮮は国家なのですから人工衛星打ち上げする権利を持つ、と理解しています。
また北朝鮮にも核保有の権利はあるでしょう。
参考 http://d.hatena.ne.jp/noharra/20090720#p1
「それは、共和国であっても同じであるはずなのに、そう考えられない」それはわたしの主張ではないですね。
(こちらも参照してください。http://d.hatena.ne.jp/noharra/20090513#p1 あやういところのある文章だが)

(以下 8/3追記)

 今の日本社会には朝鮮民主主義人民共和国(以下、文脈によって「共和国」「北朝鮮」とします)を仮想敵国としてまるで「悪魔」のように扱い、まともに取り合う必要のない国、相手の意見を聞かなくてもいい国、として扱う論調があふれています。
http://d.hatena.ne.jp/hippie/20090731/p1

 この意見を全否定すべきだという点でわたしはひびのさんに同意する。

もし日本の人達が「北朝鮮人工衛星を発射するのが怖い」と感じるのであれば、逆にこれまで何度も日本が人工衛星を発射してきた時に、共和国の人が怖いと感じているとは考えないのか。

「共和国の人」とは一体誰の事を言っているのか?、収容所収容者はその「共和国の人」に入っているのか? 共和国が「共和国の人」を表象代行する権利を持つことを認めることは、いないものとされている「収容所収容者」をさらに無視することに加担することになる。

「怖い、怖い」とまるで被害者であるかのように振る舞う日本政府と日本の世論。こういう圧倒的な情報と状況の中で、「北朝鮮にも問題があるからなぁ」と思わず思ってしまっている部分が、私にもあったことに気が付かされたのが、李東一さんのお話でした。

「圧倒的な情報と状況」つまり、仮想敵として張子の虎化された北朝鮮をめぐる言説の背後には、数百年にわたる普遍的な国家の論理の世界の圧倒的分厚さというものが存在します。それをひとりの人間の視点から相対化すること*2なくしては、「右がダメならすぐ左」といった「国家のゲーム」に取り込まれてしまうのです。

 一度、ちゃんと時間をとって、李東一さんのお話を聞いてみたいなと思いました。また、日本人はもっと李東一さんのお話を聞くべきだ、と思いました。共和国政府についての話をするなら、直接、朝鮮総聯の人の話を聞いてみようというのは、当たり前の態度のハズ。しかもすぐ近くに住んでいて普通に日本語で共和国政府の主張を教えて貰えるんですから。特に共和国政府に批判や違和感がある人こそ、お話を聞くべきだと思います。


 誰か一緒に、企画化しません?

 収容所や脱北者の問題について一人でブログに書いていても解決しないのはいうまでもない。わたしは「直接、朝鮮総聯の人の話を聞いてみようとすべき」だろうか? わたしが買った本に載っている31枚の衛星写真(すこし不鮮明なだけでグーグルアースでもちゃんと見える)は、収容所ではないなら何のかを聞いてみることはできるな。現在人民が飢餓にさらされているのかどうか?

 また、英紙フィナンシャル・タイムズは同日、北朝鮮が、援助物資を分配している世界食糧計画(WFP)や米民間活動団体(NGO)の職員に対し、4月以降の活動禁止や退去を求めたと報じた。
(2009年3月18日19時40分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080115-899562/news/20090318-OYT1T00912.htm

これが、国家の面子を重視して人民を飢えさせるという結果を軽視する方針ではないのかどうか?とか
 ひっぴいさんが企画されるのなら出席を検討したいと思う。

*1:ささいなことですが言い訳。最初、ひっぴいさんともあろうものが、と書いていたが百字こ越えたので「さん」を削除しました。

*2:口で言うほど簡単ではない