松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

ガザ攻撃をホロコーストと呼ぶことの可否

> ナチスがあなた達の祖先におこなったホロコースト
> パレスチナの人達に、子どもに、女性に、高齢者に するのはやめてください。

これではイスラエル、あるいはユダヤ人に対して説得力はありません。
逆に彼らから反発されるだけです。それは現イスラエル政府の行動に抗議しているイスラエル人や
ユダヤ人を含めて反発され逆効果となります。

理由は以下の通りです。
今行われていることは、ガザ地区パレスチナ人の罪の無い子供、女性、老人を巻き添えにした
赦し難く看過できない残酷な犯罪行為です。

しかし、ナチスの行ったホロコーストとは同一視できません。

なぜならナチス反ユダヤ主義の人種主義イデオロギーは、「ユダヤ民族を人類の敵」とし、ユダヤ民族を
根こそぎ抹殺しようとしたものであり、実際に当時1100万人といわれた欧州のユダヤ人の内、600万人を
殺しました。強制労働とガス室などによる大量虐殺が手段でした。

イスラエルは建国前からパレスチナ人の土地を奪い、差別し追放し続けておりその結果が現在の事態になっていることは
事実です。パレスチナ人がかつてのユダヤ人と同様な差別と亡命を強いられ、国際社会から不十分な援助しか得られていない
ことも事実です。
しかし、ユダヤ人の民族主義シオニズムにも、パレスチナ人を地上から抹殺しようとする極端な人種主義イデオロギーはありません。「パレスチナ民族を抹殺
する」との方針を聴いたことがありますか。イスラエルがこの方針の下に、
根こそぎパレスチナ人の大量虐殺を始めたのであれば、それこそホロコーストであると非難できます。それは事実ではありません。
逆に「イスラエル国家を消滅させる」と公然と述べているのはハマスとヒスボラを援助しているイランの大統領です。
一部の極右のシオニストユダヤ民族優越主義が、かつてのゲルマン民族優越主義や天皇イデオロギー日本民族優越主義と類似であることはわたしも認め
ますが、しかし彼らはイスラエルでは圧倒的な少数派です。決して主流になったことはありません。もし彼らが主流になれば、その時には本当にイスラエル国
家の終わりとなるとわたしは思います。ナチスドイツや天皇軍国主義が滅びたようにです。

数年前のことですが、南京大虐殺の評価を巡って、中国の研究者や関係者が、公式に「南京のホロコースト」という表現をしようとしたことがあります。それ
に対しては、ユダヤ人団体から厳重な抗議が出され、撤回したことがあります。
あの日本軍による中国人の大量虐殺でさえ、ナチスの民族抹殺犯罪とは同一視出来ないとの主張を中国は認めたのです。
わたしも揚子江河岸での捕虜の大量銃殺による死体の山の情況を、ガス室でのそれと比較して書いたことがありますが、
それでもこの犯罪の本質はホロコーストとは同一視してはならないと思います。どちらの被害者の受けた苦しみには全く、何の
違いが無いにしてもです。

そして、イスラエルパレスチナ人に対する行為を「ホロコースト」をキーワードにして非難しているのは、
ガス室を否定する歴史修正主義者とネオナチスの連中だけであることもつけ加えておきます。
ですから、イスラエル政府はもちろん、世界中でガザ攻撃に心を痛め、抗議行動をしているユダヤ人からも
この抗議は彼らからのものだとしか受け止められないでしょう。逆効果でしかありません。(梶村太一郎 1月4日)

 ある反戦派の発言を、ガザ攻撃に反対するという立場を共有する梶村太一郎さんがたしなめている。
 彼は雄弁すぎるようにわたしは感じる。ガザは抵抗しているが、ヨルダン川西岸は沈黙している。イスラエルは60年かけて沈黙を達成したではないか。これはある種のホロコースト(被害という意味で使うなら)ではないのか。
 わたしの被害とあなたの被害の差異を極大化し、結局あなたの被害をそれを累積しつづけることを国際社会に認めさせつづけたレトリックを根底から覆さないといけない。アブラハムのように。