松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

竹林伸幸さんは亡くなられました。

昨日、竹林さんを偲ぶ会があったので、出席しました。
会は主催者の心積もりを大幅に越える40人以上の出席があってはなはだ盛会でした。
死んだので、カンパ要請や行動要請も来ることがないという安心感が大勢を集めたのだ、といったひどくクールな意見もありました。
最後に主催者が挨拶し、地元の地道な活動家にとっては、ある意味、彼は迷惑な存在だったという本音が語られました。
 どんな人でも葬式や追悼会の場には、様々な思いの人々が集まり、生前に言えなかった本音とかも出てくるわけです。でも大きな軋轢がありながらも、追悼会で心から追悼してくれる数十人を持ち得たことはやはり、彼の人徳だったに違いありません。

竹林さんの遺稿の代わりとして、以下に公開書簡を紹介します。

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ブッシュ大統領への公開書簡
毎週連続米大阪領事館ヒューマンチェーン呼びかけ人
℡&fax: 0798-36-5689 竹林伸幸

拝 啓

ブッシュ大統領 閣下

あなたがアフガニスタンイラクに戦争を仕掛けて以来、私は、何度かあなたに書信を送り、又毎週1回アメリカ合衆国駐大阪・神戸総領事館の前に立ってこれらの戦争に抗議してきました。しかし、これに対してあなたや総領事からは未だ何らの応答も受けておりません。

これは、あなたには自ら仕掛けた戦争とその根底にある世界政策の正当性を説明する自信が全くないことを示していると思います。あなたが、世界最強国家の大統領としてその国際行動を国際社会に対して(とりわけその一般市民に対して)誠意をもって説明することなく、他国に対してあなたの意思を強制するために一方的に武力を行使するのは、まさしくテロリストではありませんか?

 今回は、私達日本の有志が深刻に憂慮している以下の三つの事態について、あなたの良心に訴えたいと思います。

1. あなたの侵略戦争によるイラクの子供たちの破滅的な境遇について
 最近、私達はイラクから帰国したばかりの日本人ジャーナリスト(イラクの子供たち救済をめざす日本人グループの一員としてイラクを訪問)からイラクの子供たちの現状を聞く機会がありました。その時、彼の話を聴きながら、そこで映し出された彼の録画ビデオの中で、アメリカ軍の劣化ウラン砲弾やクラスター爆弾などの残虐な兵器によって殺傷された多くの子供たちの悲惨な姿を見て、私達は激しい憤りを覚えました。

 ブッシュ大統領、あなたはイラクアフガニスタンでのこのような残虐行為の状況を写したビデオや写真を見たことがありますか?もし、こうした映像を見ていて、なおかつあなたがイラクアフガニスタンでの戦争を続けているのであれば、私達はあなたを人間とみなすことが出来ません。

2. 日本国防衛省の破廉恥な汚職事件
 目下日本は政治家・官僚・業者らを巻き込んだ破廉恥な汚職事件で大騒ぎになっていますが、下述のように、彼等は日本に関連したアメリカの軍事政策に深く係わっております。

(1) 構造的な係わり
今回発覚した防衛省をめぐる贈収賄事件は、アメリカの戦争政策に追随して日本の軍国主義化を促進してきた小泉・安倍両政権下での武器調達にからんで行われたものです。

(2) 戦略的な係わり
目下進行中の在日米軍の再編成は、アジア太平洋地域におけるアメリカの軍事力を増強するものであり、延いては世界制覇をめざすアメリカの軍事戦略に基いた侵略政策を更に拡大させるものとなり、その結果として、これまでの数十年間にヴェトナム・アフガニスタンイラクなどで見てきたように、世界各地の平和を愛好する諸民族を犠牲にするものであります。しかも、このようなアメリカの戦略的軍事増強のために、日本の国土・領海その他多くの社会基盤施設が使われ、更に、こうした軍需関連で利益を追求する業者と彼等を支援する政治家や官僚たちによって私達の税金がふんだんに使われて日本国民が収奪されるのです。

3. アメリカが1945年以来日本民族と人類に対して犯した二つの犯罪
(1) 天皇の戦争責任の赦免とその権威利用
日本は、1937年に中国に対して、1941年末にはアメリカとその同盟諸国に対して全面戦争を仕掛け、その結果アジア太平洋地域で二千万人以上を犠牲にしました。しかし、これらの戦争を己の名によって強行した当時の日本国の主権者であり最高意思決定・命令者であった天皇裕仁は、その敗戦後、戦勝国アメリカとその同盟諸国によって戦争責任を問われ訴追されることはなかった。その代わりに、彼の臣下の最上位者少数が主戦犯として裁かれ処刑されただけで、天皇本人の戦争責任は不問に付され、戦後日本に対するアメリカの占領管理を容易にするために彼の民族統合権威が利用されたのです。この天皇の戦争責任赦免とその権威利用は、戦後「立憲君主国」としての日本社会に戦前の専制君主国家体制の暗い影を残すこととなり、日本が真の民主主義社会になることを妨げてきました。

(2) 日本に対するアメリカの原爆投下
アメリカ政府は、日本が既に戦争続行能力を失っている最後の時に原爆2発を投下して日本に悲惨な破滅的被害を加えたにも拘わらず、その残虐行為をまともに反省することなく、逆に、それ以後は核兵器の開発増強を急ぎ、劣化ウランを使用した種々の弾薬に至るまで核兵器の多様化とその配備拡大を続行してきました。こうして際限なく増強される核戦争遂行能力をもって、あなたは、アメリカ大統領として、敵対国とみなす相手に対しては先制核攻撃も辞さないと宣言しています。これは、アメリカが情け容赦なく世界制覇を追求することを示すものです。

さて、以上申し上げたことに基き、私は、この際あなたとあなたの行政府が、「人類全ての者が、永遠の大宇宙の中での微小で脆弱な惑星「地球」の表面で互いに対等な存在として生まれ、そこでの一時的な生命活動を平等に享受する権利を有する」との普遍的真理に照らして、独善的な
アメリカ帝国の世界平和」の追求を見直すように強く要請します。

更にその上で、私は、あなたとあなたの行政府が、私達の憂慮している上述のような事態を真摯に受け止めて熟慮し、以下のことを実行されるよう強く要請します。

アフガニスタンイラクに対する戦争を早急に停止し収束すること、

−戦争で荒廃したこれらの国で苦しんでいる子供たちの全てを救済して平和で健全な生活が
出来るように最善を尽くすこと、

−あなた方の世界制覇のための戦争政策とそれを支える軍備増強を取り止めること、そして

−私達の惑星「地球」上に真の平和な人類社会を確立するために核兵器の完全撤廃と国際社会
全体の全面的な軍備撤廃を開始し先導すること。

敬 具