松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

小沢を潰したのは米国の意志か?

http://d.hatena.ne.jp/noharra/20071102#p2
で「空爆の是非が論点である」と書いたが、空爆しているのは米軍であるから、「対米従属主義」を肯定するのかという論点とほぼ重なる。
小沢氏の「世界」11月号の公開書簡は次のように述べていた。

 現実に、米国はもはや、一国で世界の平和維持、すなわち国際社会の警察官の役割を果たすことが不可能になっています。今日のアフガニスタンイラクの実態は、その結果にほかなりません。米国のブッシュ大統領は、「これは米国の戦争だ、自衛戦争だ。したがって国連の決議はいらない」と啖呵を切ってアフガン戦争を始めました。しかし実際には、当然ながら、米国単独では収められず、国際社会に助けを求めているのが現状ではないでしょうか。
 結局、日本国憲法の理念の通り、世界の平和は国際社会みんなで力を合わせて守っていく以外に論理的にも現実的にも他に方法がありません。今日の国際社会の混迷はそのことを、明確に示していると思います。湾岸戦争のような侵略の排除であれ、テロリズムとの戦いであれ、同じことです。
 ところが、米国は自分自身の孤立主義と過度の自負心が常に、国連はじめ国際社会の調和を乱していることに気が付いていません。本当に日本が米国の同盟国であるなら(その他の同盟諸国も同じですが)、米国にきちんと国際社会の重要な一員として振る舞うよう忠告すべきです。

 例えば、お巡りさんは自分自身の正当防衛権(国家では自衛権)に基づいて、銃器を所持し、強制力を行使し、必要な時には武力を使うことが許されているのでしょうか。そうではありません。それはあくまで社会の役割として警察官に与えられた権能であって、警察官個人の正当防衛ではありません。また例えば、たとえ自分の前で殺人が行われても、一般国民はその犯人を殺してはなりません。それはリンチにほかならず、絶対に許されないことです。
 そのことを国際社会に当てはめて考えてみると、よく分かります。国際社会で合意を得ないまま勝手に武力を行使するのは、リンチでしかありません。それを認めたら、国際社会の秩序と平和を保つことはできません。

 イラク戦争は、米英軍の攻撃によって行われました。国連においては、同盟国であるはずのフランスも反対し、ロシアも反対し、中国も反対した。それにもかかわらず米英の単独行動として始まったのがイラク戦争です。しかも、戦争の最大の理由だったイラク大量破壊兵器保有は事実ではなかったことが明白になり、米英両国もそれを認めざるを得なくなるに至り、イラク戦争大義そのものがなくなってしまいました。
 さらに、その後の占領政策の失敗の結果、イラクの社会は混乱を極めています。

 小沢の認識は正しい。
ただ左翼=イラク反戦派にとってこれは常識であり、目新しい意見では無い。しかし決定的に違う点がある。小沢は今も半ば占領国である米国に対し日本を背負って、真正面からものを言っていこうとしている。このような本気は貴重なものである。
 外務省と多数派の政治家は対米従属を対米従属と思っていない。マスコミの誘導により多くの国民もそれになんとなく同意している。共産党なども9条によって戦後の平和が守られたと言っているので対米従属の共犯である。このような巨大な倒錯の空気に対して確実にひとつの抵抗を示したものであると評価してよい。
 しかしイラク反戦あるいは対米従属の廃止という世論は盛り上がらなかった。*1
 なんの大義もない、いまや大量人殺し行為といわれてもしかたない、イラク戦争〜占領への加担を日本はすぐに止めるべきである。健全なナショナリズムを目指す諸君も良く考えていただきたい!

 その戦争体質にどっぷりつかり、そこから抜け出せない米国の戦争と一線を画して、
平和主義日本を貫くには、米国への単独依存ではなく、国際的に多面的な関係を構築
していかねばならない。いわゆる単独講和か、全面講和か、という戦後の日本の針路
を分けた大論争が、いま再び重要に必要になっている。

 小沢氏がインド洋の給油継続を憲法違反として反対し、ISAFに言及した岩波
「世界」11月号の公開書簡は、日本国憲法は世界の平和を希求し、国際社会で名誉
ある地位を占めたいと平和原則を高らかに謳っているのだから、(1)日本の自衛隊
を特定の国の軍事作戦のために派遣するような無原則をやめるべきであり、(2)自
分が政権をとって外交・安全保障を決定する立場になれば、それにかわってISAF
への参加を実現したい、だが(3)テロとの戦いにおいては、どんなに困難であって
も貧困を克服し、生活を安定させることが最も有効な方法であり、銃剣をもって人を
治めることはできない、と提起している。

 つまりそこでの小沢氏のISAF論は、特定の国の軍事作戦に日本は協力すべきで
はないとの立場から主張されており、対米追従から脱すべきとの主張に「政治的」意
味と幅をもたせるために持ち出されたものとも考えられ、民生支援をイメージしたも
のとの受け取れるが、そこに自衛隊がどのように絡むのかについてのイメージは、や
はりこれも「政治的」な意味と幅、つまり自民党や米国との交渉の余地を残したもの
となっているように、私には感じられた。そして小沢流で行けば、そこは、それこそ
「日本国民が決めること」ということにもなるのだろう。そこにイラク戦争に反対し
民主党が、野党連携の軸として勢力を伸ばし、政権交代を目指すだけの力を集めて
きた力の源泉があるが、半面、そこに自衛隊を海外に派遣したがる自民党と野合する
隙間も確保されていたともいえる。
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/c89fe2a70f0a919f20adc3b027134238

最大は、福田首相の決断である。
(1)国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は国連安保理、もしくは国連総会の決
議によって設立、あるいは認められた国連の活動に参加することに限る、したがって
特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない。
→つまり対米追従から国連中心主義への移行である。
(2)新テロ特措法案はできれば通してほしいが、両党が連立し、新しい協力体制を
確立することを最優先と考えているので、あえてこの法案の成立にこだわることはし
ない。
→新テロ特措法案をあきらめる可能性、である。

 事態をマスコミによって歪曲させてはならない。
「特定の国の軍事作戦については、我が国は支援活動をしない。」という原則だけは、福田首相に再確認させていこう。

*1:わたしも一度デモにいっただけだ。