松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

ピエールさんの論文

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/p39saku/Ianfu.htm
従軍慰安婦」問題 はなかなか力作で興味深い。

特に賠償問題は、野原は苦手なので、引用してみる。

日本は、まず学者たちの力を借りて防衛研究所などの未公開史料を徹底的・かつ短期間に洗い直すべきだ。そして日本を無罪と出来る証拠でも見つからない限りは、慰安婦制度が国際法違反であるという非難を認め、国家責任を認めなければならない。国民基金ではなく、責任を認めた上で、各国に向けて首相・政府が公式謝罪を発表する。政府内には戦争責任問題対策部署を無期限で設置する。
 そして、台湾及び北朝鮮の元慰安婦に一人当たり数百万の賠償金を支払う。日本が「慰安婦問題も国家間賠償によって解決済み」としてきたその国家間賠償が、台湾と北朝鮮には行われていないからである。特に台湾には、軍人等には未払い絵与等を支払っているから、慰安婦だけ差別することはできない。被害認定には相当な労力と困難を伴うが、それに対しては、医学者や心理学者も動員して、緩めの認定基準の設定へ向けあらかじめ話し合っておくことが望ましい。慰安婦の境遇が様々だったことは最初に述べた通りなので、全ての元慰安婦に賠償金を支給すべきかどうかは難しいところだが、殆どは腹を決めて賠償するしかなかろう。
 韓国・フィリピン・インドネシア・中国等の国々への賠償は、何度かの首脳会議を開いてからの方が良いだろう。国家間賠償や請求権破棄条約にもかかわらず個人の賠償請求権が生きているとすれば、朝鮮半島満州地方などに残され接収されてしまった日本資産に関しても、日本が韓国政府や中国政府に対し損害賠償請求できるということになる。それをはっきりさせれば、戦争被害者個々人は賠償の恩恵を受けるとしても、国家は互いに“損失”を被るという知識が共有される。そうなれば「個人の賠償請求権が生きている」から慰安婦に賠償がなされるのではなく、「個人の賠償請求権は国家間条約により解決済み」だが慰安婦問題は賠償条約締結後に発覚した国際法違反だから賠償する、という理論的前提に立てる可能性がある。そうなれば、賠償条約締結前から明確であった諸問題(民間私財の破壊、日本軍人として働いた人々の障害年金、等)は「国家間条約によって解決済み」である、と確認できる。その後の際限のない戦後補償裁判に応じる必要が減るはずだ。そのような要求には、国家賠償を受け取った国の政府が応えれば良い。

とりあえずこれで良いのではないか。

「時効では?」への反論。

 さて、極東国際軍事裁判(東京裁判。1946年5月〜48年11月)において、日本は一応、国際法によって裁かれた。そこで慰安婦問題はどのように裁かれたかといえば、告訴自体行われていない。これは、慰安婦問題の主な被害者であった韓国が敗戦国側であり発言力を持たなかったこと、性暴力を重大な犯罪と捉える視点が不完全であったこと、当時の欧米は人種差別意識が強く黄色人種に人権があるとは考えなかったこと、そもそも被害者が「自らの恥」をカミングアウトできる時代状況でなかったこと、などの理由が挙げられるであろう。慰安婦問題など多くの個人補償問題は裁かれずに終わり、本来ならば時効が成立するはずであった。しかし1968年の国連総会で「戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用条約」が採択され、国際法違反にはいつでも追訴の可能性が残されることになった。(同上)

http://homepage2.nifty.com/mekkie/peace/bunken/bunken10.html
戦争及び人道に対する罪に対する時効不適用条約 について日本はまだ加入していないが、同条約の原則は国際司法の実行例を通じて国際慣習法としての特徴を示している、という理解。

慰安所の不当性の判断について

 慰安婦問題に関して言い換えてみよう。日本は強制労働や未成年者の性労働を禁止する条約を採択していた。民間業者によって行われた不法に対しては、「応募の意志を示さない者、親に身売りされた者や未成年者を慰安婦として徴集することを禁ず」といった条例や規則・及び業者がそれに違反した場合の罰則規定を、政府や軍が定めて実際に運用していたか、ということが問題となるだろう。日本がこのような規則を定めていた証拠・及び違反業者を実際に罰したという証拠が提示されれば、強制連行について日本に責任はないであろう。それから、慰安所内で行われた性暴力に対しては、「労働者を体調などによる当人の拒絶意志に反して労働させること、また労働者を虐待・殺傷することを禁ず」といった規則・それに違反にした兵士や管理者に対する罰則規定が、定められ運用されていたか、という問題になろう。(同上)