松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

「平和と繁栄」という欺瞞

「平和と繁栄の回廊」構想について

内閣総理大臣 安倍晋三
外務大臣 麻生太郎
外務省 中東アフリカ局長 奥田紀宏 様
JICA理事長 緒方貞子

イスラエルのツィピ・リブニ外務大臣が来日し、政府およびJICA理事と日本政府が提出している「平和と繁栄の回廊」構想を巡って話し合いがもたれると考えられますが、この構想には懸念すべき点があまりにも多いと言わざるをえません。

現在、この「平和と繁栄の回廊」構想が対象にしているヨルダン渓谷西岸側は、イスラエルの占領下に置かれており、それ自体が国連決議に反するほか、国際法に照らせば違法であるユダヤ人入植地が散在し、パレスチナ人の移動は厳しく制限された状態にあります。

イスラエル政府首脳陣は、繰り返し「ヨルダン渓谷は恒久的にイスラエルのものとなる」という発言を繰り返し(2005年シャロン、2006年オルメルト)、この地域の入植地拡大は現在も進められています。

その状態を放置したまま、農産業団地による開発を援助しても、それは現にある占領を固定、補強するものになりかねないと考えられます。そのような占領地での開発援助は国際法違反となる可能性もあります。

そして、実際にその農産業団地によって、パレスチナ人にどのような利益があるのでしょうか。

「二国家構想の実現には、持続的な経済開発を伴う、健全なパレスチナ国家をイスラエル、ヨルダン等近隣諸国との協力を得て樹立することが不可欠。」とこの構想のプレスリリースにはありましたが、ヨルダン渓谷地域のイスラエルの占領をそのままにしてはパレスチナの従属状態は深められるばかりで、パレスチナが国家として成立することも、持続的な経済基盤を持つことも不可能だと思われます。

イスラエルの占領を問題にしないかぎり、この構想には根本的な欠陥があると考え、構想の取り消し、または抜本的な見直しを求めます。

(氏名)

http://palestine-heiwa.org/feature/oda/
特集「平和と繁栄の回廊」構想・日本政府のヨルダン渓谷開発援助計画について:パレスチナ情報センター
「ヨルダン渓谷西岸側は、イスラエルの占領下に置かれている」その状態自体が、違法不当なものであると指摘している。
わたしたちは、国家を超える明確な審級を持っていない。しかしそれは審級がないということではない。わたしたちが正義という言葉を必要とする限り、国際法という基準も存在しなければならない。そうした基準により違法不当とされる「占領」をここで否定しないという判断を、日本政府はとった。
イラク占領がイラクの「平和と繁栄」につながるとして支持し続けている日本政府らしい判断である。といえるかもしれない。
したがってここでも「イラク占領がイラクの「平和と繁栄」につながらなかった」という事実をどうふまえるかが、議論の決定的な分かれ目になる。
イラク占領がイラクの「平和と繁栄」につながらなかった」という「醜悪な、そして血塗られた」事実が持つ説得力を、無視しようとする勢力に荷担するのか? それともそれに反対するのか?