松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

青空にさしつらぬかれ今を在る

三輪山ゆさしいづる陽を負ふべしや 罪ほとばしり水配(みくま)るわれの

青空にさしつらぬかれ今を在る、あはれ眼のために何と語らむ

           山中智恵子 p48『山中智恵子歌集』国文社

水配(みくま)るとは何をしているのだろうか、地震の後の自衛隊給水車を思い出しても良いのか。あまりにも神々しい絶対権力を思わず体現してしまった〈われ〉へのどまどい。
二首目はよく分からない、「眼のために」のところが。ただ上の戒厳令に引きつけていうと、革命はあえなく挫折したにもかかわらず、「青空にさしつらぬかれ」た経験は今も過去ではなく現在としてある、そのあふれる過剰が、罪ほとばしり、あはれ、といった言葉で暗示されているのだろうか。