松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

僕らは彼らの存在を認めている

なぜなら、僕らは彼らの存在を認めているのですから。「君たちはここに存在する」と僕らは言っています。君たちは僕らの社会を破壊し、僕らの土地を奪ったけれど、僕らは事実上君たちが民族・国民であること(ネイションフッド)は認めている。そして次のようなかたちで君たちと平和的に暮らすことをのぞんでいる。僕らは西岸地区とガザにパレスチナ国家をつくり、民族自決を実現する。君たちは1967年以前のイスラエル領土に君たちの国家を持ち、主権を持てばいい。しかし、彼らは決して僕らに承認を与えようとしないのです。民族・国民(ネイション)としては決して。
p64 サイード『ペンと剣』isbn:4480089519

1988年までの10年間は、イスラエル人たちは僕のところに話し合いに来て、君たちの承認が欲しいのだと申し入れたものでした。君たちが国連安保理決議242を受け入れイスラエルを国家として承認すれば、どんなに助かるだろう。そうすれば、いっさいの状況が変わるだろうと言うのです。そこで僕らは承認しました。だけど何ひとつ変わりません。むしろ事態は悪化しました。(同上p65)

イードの1991.10.8のインタビューより。サイードイスラエル国家の存在を認めている。
http://d.hatena.ne.jp/noharra/20060311#p2 で書いたハマスの態度も、(いまや?)上のサイードのそれに非常に近いもののようだ。現実の抑圧者を言葉の上でだけ否認してみせるのは強がりにすぎない。ハマスにせよ誰にせよパレスチナ人は現実を否応なく知っている。
 それに対して、欧米のシオニストは、現実を現実として見ることができず形而上学的枠組みによって平板な観念に還元されたものを現実だと思っている。自らの善意が善意であるためには現実はそういうものでなければならないから、という理由によって。