松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

父母の交合の時に、滴る物は、微なれども

 二柱の神の、此の大八洲国を産み給えること、世の人、漢意を以て見る故、に、これを信じずして、種々なまさかしき説あれども、そはみな私ごとなれば、取るにたらず、ただ古えの伝えの随(まま)に心得べし。ただ人の児を産むが如く、御腹より産み賜えるもの也。(略)
 大八洲を産み賜えるも、其の如くにて、まず二柱の神の交合(ミトノマグハヒ)の滴(しただり)、女神の御腹内に、合い凝り成りて、さて御腹より産み出(いだ)し給うところは微小(ちいさ)き物なれども、其の物に、かの漂える物、寄り聚(あつまり)凝りて、国土とは成れる也。近くは人の身の成る始めにても知るべし。父母の交合(マグアヒ)の時に、滴(しただ)る物は、微(いささか)なれども、月を経て、児の形となるにあらずや。(略)其の中にも、殊に蛇などは、産まれたるほどは、尋常(よのつね)の小き虫なるが、年久しく経て、大蛇となるに至りては、ことの外に大きなる形ならずや。
(服部中庸「三大考」)*1

第五図の説明の一部。
精液の描写など博物学的で可視的な感じ。

*1:p260 日本思想体系50