松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

国家秩序のためなら人を殺しても良い。

▼しかし、国と国とが深い関係にあるからといって、その経緯を知っている人が、「ミャンマー民衆の側」に立つのか、「ミャンマー政府の側」に立つのかは、わからない。その人に拠る。

と、言いたいところだが、どうも、「政府の側」に立つ人が圧倒的に多いようだ。「前提」を問う思考を停止したまま、政府の視点、国家の視野でしか物事を観ない人が、殊に政策の決定権や影響力を持つ政官財の人々のなかには、圧倒的に多いんじゃなかろうか。あのビルマ大使のおっさんだけじゃなかろう、あんなに正直には言わずとも。

本誌読者の皆さんにはご案内の通り、ぼくは国家の「前提」を問う視点や意識を欠いた思考が、大嫌いだし、そういう言動に触れると、生理的にすっげえ違和感を覚えるわけだが、そういう単なる好き嫌いを言いたいだけではなく、国家という枠組み自体を疑わない思考の枠組みでもって、はたして「国益」に適う道を見つけることができるだろうか、という素朴な疑問もあるんだよねえ。

▼その国を誰がつくったのか、とか、どういう成り立ちでできたのか、とか一切関係なく、ただ、国家「である」という表象に縋(すが)るセンス、感性、とでも言うべきか。「人間」が見えていない、とでも言おうか。

その感性の危うさ、暴力性に気づいている人は、決して少なくないと思うんだけど、投稿にあった大使の発言、

→政治集会は許可制
→従って無届デモは違法
→政府は法律に従って違反者を取り締まってるだけ
→従って「ミャンマーには『政治犯』など1人もいない」とい
ミャンマー政府の主張こそ正義だ

という「論理」が、このニッポンでは(おそらく他の多くの国でも)大きな説得力を持っているように感じる。話題はミャンマー情勢だが、この論理そのものは、ミャンマーに限らない話だと思うのだ。
http://takeyama.jugem.cc/?eid=912

ミャンマー大使とはこの人かな?
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711250209/1.php

「民主主義の強要はかえって混乱」元ミャンマー大使が講演

ビルマミャンマー)の民主化を絶対視する傾向のあるメディアに警鐘を鳴らす勇気の人か、それとも軍政側を代弁するだけの「宣伝マン」なのか――。ミャンマー大使を95年から3年間務めた山口洋一氏が22日、東京の日本外国特派員協会で講演し、「国情を無視して民主主義を強要すると、かえって混乱を招く」とミャンマー政府を擁護する持論を語った。

 ミャンマー政府に対する批判のなかで特にあげられているのは、90年の総選挙でアウンサン・スー・チー氏の率いる最大野党・国民民主連盟が圧勝したのに、民政に戻さずに軍事政権が維持されている点だ。

 山口氏は「ミャンマー批判で軍政の原罪のようにいわれているが、内戦状態だったあの時点でスー・チー氏に政権移譲をしていたら、あるいはいまミャンマーという国はなくなっていたかもしれない」と軍事政権が正当であるとの認識を示し、「選挙をしないほうがよかった」と話した。

 山口氏は、日本の一部週刊誌やテレビ番組で、ミャンマー政府を擁護し、民衆の期待はアウンサン・スー・チー氏から離れつつあると主張したことで知られている。一連の主張のなかで特に強調したのは、日本や欧米の報道がビルマの実情をゆがめて伝えているという点だ。この日も「軍事政権が悪玉でスー・チー氏は善玉、と決めてかかっている」と批判した。

 ミャンマー政府は民主化への取り組みを進めているが、前提条件がまだ揃っていず「踊り場の段階」にある、とする。「7段階のロードマップ(行程表)に則って民主化へ漸進しているところだ」という。

 講演の1週間前にビルマを訪れた山口氏は、ヤンゴンに代わって新設された首都・ネピドーでは、ミャンマー政府の案内で大統領官邸、上・下院の国会議事堂などの建設現場を視察し、「民政移管は本気だな」との感想を持ったそうだ。

 「軍事政権といえども、彼らなりに国のため国民のために必死になって国づくりに取り組んでいるという実情があり、これがあまり理解されていない」

 一方、山口氏への風当たりは強い。「往々にして『山口は軍事政権寄りではないか』と見られてしまうが、私は極力中立的でフェアな立場から実情をありのまま捉えようとしている」と言うが、在日ビルマ人の集会などでは名指しで「ミャンマー政府の宣伝マン」と批判されるほどだ。

 僧侶らによるデモを取材中に銃撃を受け死亡した映像ジャーナリスト・長井健司さん(享年50)のビデオカメラがいまだミャンマー政府から返却されていないことについては、数枚の写真と図を使って現場の状況を説明し、「混乱のなかで紛失した」というミャンマー政府の主張を支持。長井さんの死亡は「不幸な偶然が重なった」との説明をミャンマー政府から受けているという。
(黒井孝明)