松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

スターリニズムの悪の問題

高杉一郎さんという方の訃報を見ました。彼の「極光のかげに」と言う本は読んだことがあります。とても興味深い本でした。
そこで、下記のサイトの一部を、従軍慰安婦グループの掲示板に引用しました。従軍慰安婦とは関係もないのですが、日本人の戦争体験を振り返る上でシベリア抑留体験は大きな問題であるからです。
引用元:http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/siberia2.htm#m64
引用先:http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/6/40

シベリア抑留体験は、語られてこなかったわけではない。語られてきた。戦争体験の全体を被害体験としてイメージするのに好都合だったかもしれない。

この受難は外敵から蒙った恥辱としては最大級の一つであり、日本人の心に癒しがたい傷跡を残しました。で あるのにこの国は “臭いものには蓋”と、触れず、考えず、償わずで、すべてを過去の中へ葬り去ろうとしています。この道理に外れたやり方に異を立てたのがカマキリで、非力を顧みず五年を争い最高裁にまで訴えましたが、あわれ敗訴となりました。
http://kamakiriikeda.hp.infoseek.co.jp/

というか当事者は無視されたままですが。


話は変わって、最初の宮地氏のサイトに次のような文章がありました。

 野坂とは別に、山本懸蔵の側も日本人共産党員・シンパをNKVDに密告・告発し、銃殺・強制収容所送りにさせました。密告相手は国崎定洞、勝野金政ら4人で、その事実は、ソ連崩壊後の機密資料で判明しました。当時、モスクワにいた日本共産党員・シンパ数十人の中で、野坂・山本というトップから、「自分が逮捕・銃殺されないため」に、“密告者に転向”していったのです。それと同質のことは、石堂清倫が『転向再論』で示唆したように、1934年6月9日、「佐野学、鍋山貞親の転向声明」と、トップからの転向による「転向の雪崩現象」発生という形で起きました。日本における「特高へのトップからの転向」と、モスクワにおける「スターリン粛清加担へのトップからの転向」という2つの異質な、かつ同質さを含む現象を、どう考えたらいいのでしょうか。そこにおける、コミンテルン日本支部(戦前の日本共産党)の体質とは、何だったのでしょうか。

 当時、モスクワには、ソ連理想社会を求めた日本人共産党員やシンパがかなりいました。『旧ソ連秘密文書など記録による粛清確認者』は、34人です。その内訳は、(1)銃殺18人、(2)強制収容所送り7人、(3)国外追放4人、(4)逮捕後行先不明4人で、(5)釈放は野坂竜1人だけでした。コミンテルン執行委員・野坂参三は、妻の逮捕後、山本懸蔵を銃殺させることと引き換えに、妻の釈放と「密告者」としての自己の安全を得ました。「“人民の敵”“外国のスパイ”容疑者を密告すること」こそが、スターリンゲペウへの忠誠度を証明し、自己と家族の逮捕を免れる唯一の行為となる社会主義国家システムでした。さらには、その「密告者」が密告されるというのが、理想の社会主義国家の実態でした。加藤哲郎一橋大学教授が、著書やHPにおいて、34人の経歴・粛清経過を載せています。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~mike/siberia2.htm

ベルリン反帝グループを調査していくうちに、ファシズムと並ぶもう一つの現代史の謎につきあたりました。ソ連スターリンによる大量粛清です。ヒットラーの政権獲得で、在独日本人の反ナチ活動家たちも国外追放などの迫害を受け、日本に帰ると治安維持法下の特高警察から逃れられないため、メンバーの何人かは当時「労働者の祖国」とされたソ連に亡命しました。ところがソ連では、仮想敵国日本からやってきた人々は、共産党員や左翼知識人であれ労働組合活動家であれ、誰でも「スパイ」と疑われる運命にありました。スターリン粛清が頂点に達する1936ー38年期には、ベルリン反帝グループのリーダー国崎定洞が「日本帝国主義のスパイ」として銃殺され、メンバーの佐野碩らが国外追放になりました。
南京大虐殺の頃に恋人と樺太から越境した女優岡田嘉子ラーゲリ体験の悲劇は、彼女の死後に明らかにされました。当時の在ソ日本人で大粛清期に無傷だったのは、先年亡くなった野坂参三日本共産党議長だけと言っていいでしょう。
国崎定洞の粛清をソ連崩壊で可能になった秘密文書の解読で追求する過程で、当時のソ連には、少なく見積もっても100人近い日本人が在住しており、そのほとんどが国崎定洞と同じ運命をたどった可能性が強いことがわかりました。
http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Wanted.html

下は加藤哲郎氏のページから。
1934年「佐野学、鍋山貞親の転向」は有名である。高校の教科書にも出ている? しかし上で言っているように、「野坂・山本が「自分が逮捕・銃殺されないため」に、“密告者に転向”」した事実があるのだとすれば*1、佐野、鍋山の転向と同程度に重要な出来事ではないだろうか。もちろん、戦争期の日本において思想の自由が一切なかったことの象徴として佐野、鍋山という固有名は重要性を持つ。日本は軍国主義に支配されたがスターリニズムに支配されたことはない。しかし日本でもそれは大きな勢力を持ち現在も影響力は小さくない。野坂・山本の転向・粛正への加担・悲惨という問題は単なる反共の問題ではなく、もっと重要な問題として認識されなければいけない。
もちろん低劣なネット右翼勢力が*2その妨げになることも確かだが、そこは遠慮せず、公明正大に認識していくべきだ。
で、こうした問題を考えていくことが、上で述べた世界の38%にかかった霞を払いのけ、(横田めぐみさんを奪還する)ことにつながると思うのだが。
・・・
うーん。

*1:疑う根拠はないが

*2:かれらに反共の餌を与えてやることへの警戒感が