松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

テロとの戦いとパキスタン民主主義の運命

「政権は、テロリストの逮捕を名目に数百人の行方不明者を出している」と批判するチャウダリー長官は、民主化の象徴的存在になりつつある。
http://my.reset.jp/~adachihayao/070516E.htm

と栗田慎一氏が語ったのは今年5月のこと。現在もなおそこを中心にパキスタンを観察しつづけてよいと氏は考えている。

毎日新聞の「記者の目」では今日11/20 パキスタンを取り上げている。

 しかし、同国の本当の危機は政権の意に沿わない最高裁判事(チャウダリー)が解任され、民主主義の根幹である「司法の独立」が封殺されたことだ。

 ムシャラフ−ブットという対立構図だけにとらわれてはならない。

 パキスタンの「闇」はいまに始まったことではない。90年代(略)さらにそれ以前から繰り返されてきた。 *1
・・・
 真相解明を図った記者たちの失踪も後を絶たない。01年9月の米同時多発テロ後、パキスタンでテロの真相を追っていた米紙記者ダニエル・パール氏の拉致・殺害事件は象徴的だ。
(略)

えーとここまで新聞から書き写しながら、ネットにあるかもとググってみるとありました。
部分コピペを続ける。

 ムシャラフ大統領の陸軍参謀長との兼務を「違憲」とする判決を用意していたとされるチャウダリー前長官は、テロとの戦いをめぐって行方不明になった人たちの所在解明にも力を入れる姿勢を示していた。つまりこの国の闇と向かい合おうとしていたのだ。

 大統領には、ブッシュ米政権が求める通りに対テロ戦争を遂行したら、国内が危機に陥ったとの思いがある。アフガニスタン国境付近での武装勢力掃討作戦を強化したら、報復の自爆テロが頻発した。公正公平な選挙をしたら、イスラム原理主義勢力が政権を握り、核兵器も過激派の手に落ちるかもしれない。それなのに司法は憲法を盾に民主化を求める。「民主化」と「対テロ戦争」は両立しないのだ、と。

 大統領はクーデターを起こした99年、汚職や情実政治にまみれたブット氏ら政党政治家に代わる清廉な軍人指導者として、国民の圧倒的な支持を得た。それが今や、米国の圧力下での対テロ戦争遂行を名目に、司法の独立も報道の自由も、そして自国民の生命にすらも目をつぶって突っ走る。
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20071120ddm004070032000c.html

記事全体を読んでもらえば良いので、ブックマークだけして、ブログにあげるのはやめとくことにした。が同じ栗田氏の次の記事を見つけたので合わせて上げることにした。

パキスタン>「暗黒の日」で噴出する矛盾と反発
5月14日20時45分配信 毎日新聞


 【ニューデリー栗田慎一】パキスタン南部カラチで12日から13日にかけて起きた反政府デモで死者約40人が出た惨事について、野党側は「暗黒の日」と呼んで非難を強め、再びデモを展開する構えだ。ムシャラフ大統領が非常事態宣言を出して強硬手段に訴えれば、米国など民主化を求める国際社会の外圧が増す可能性がある。デモが続けば野党勢力が結束を強め、国内の政治的脅威は増しかねない。大統領が01年米同時多発テロ以降、力で封じ込めてきた「矛盾や反発」が、年内に予定される総選挙を前に一気に噴き出した格好で、大統領に厳しい選択を迫ることになった。
 14日早朝、ハミド最高裁判所事務次長が、イスラマバードの自宅で射殺体で発見された。詳細は不明で、警察当局は「強盗に殺害された可能性」に触れた。だが大統領が3月に行ったチャウダリー最高裁長官の更迭処分を撤回するよう、支持者らが求めた不服嘆願書の審理はこの日、中止された。長官の弁護団の1人はロイター通信に「(事務次長は)我々にとって重要な人物だった」と語り、審理中止との関連を示唆した。
 一方、イスラム教徒で作る野党連合は同日、最高裁に大統領の辞任を求める請願書を提出。反大統領包囲網が高まりを見せている。カラチなど主要都市では14日も抗議行動が散発的に続き、治安部隊が鎮圧に向かうなど混乱が続いている。
 一連の反政府デモの発端となった最高裁長官更迭の理由は、「公務員である息子の昇進にかかわった職権乱用」だった。しかし実際は、長官が大統領の陸軍参謀長の兼務を「憲法違反」とする判決を準備していたためとされ、司法関係者が「違法な司法介入」と抗議を始めた。これに野党勢力なども合流し、大規模デモに発展した。
 99年の軍事クーデターで政権を追われた野党パキスタン人民党党首のブット元首相が4月、滞在先のアラブ首長国連邦で、「民主国家樹立のため近く帰国する」とメディアに語ったことも支持者らの勢いを強めた。
 米軍は「テロリストの温床だ」として、アフガニスタンとの国境付近の部族支配地域で掃討作戦を展開し、地元民間人に多数の犠牲者が出ている。それにもかかわらず、米国の「テロとの戦い」に協力し続ける大統領に対する住民の怒りは頂点に達している。
 13日のカラチの流血騒動は、与党が野党のデモを阻止しようとしたことが直接の引き金だった。「政権は、テロリストの逮捕を名目に数百人の行方不明者を出している」と批判するチャウダリー長官は、民主化の象徴的存在になりつつある。大統領は「(死傷者が出たのは)チャウダリー長官がデモに参加しようとしたためだ」と批判したが、対立を鮮明にすればするほど、逆効果となる可能性をはらんでいる。
http://my.reset.jp/~adachihayao/070516E.htm

参考:
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071111-00000026-maip-int

*1:「闇」の濃さについては、ラシュディの小説「恥」を読むと分かるような気もする。どろどろに歪曲したマジックリアリズム小説なので真に受けてはいけないが。1983年の "Shame" (『恥』):パキスタンの政治的混乱を、ズルフィカール・アリー・ブットー、ズィアー・ウル・ハックをモデルにして描いた、といわれている。