松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

中学校1年生の数学

ある人が5kmの道のりを自転車に乗って、毎時12kmの速さで走っていたが、途中で自転車が故障したため、そこから毎時4kmの速さで歩き、合わせて1時間かかった。
歩いた道のりを求めなさい。

これは中1の問題だから本質的には難しくはないのですが、一見難しそうに見えるようにできている意地悪な問題です。
試験というのは差を付けるためのものかもしれない。できない子には劣等感を与え、出来る子には問題というのはテクニックだという間違った認識を与える(教育上良くないとも思える)つまらない問題がしばしばあります。
この問題は大人にも難しい。5,4,1といった簡単な整数しかでてこないわりには整数の範囲内では解けそうもないことが(直感的に)分かる。*1
問題とは何か?「歩いた道のりを求めなさい。」と書いてあるからその答えを求めなければならないと子供は思ってしまう。しかしこれは実は、方程式の問題であり、文章を式に翻訳するというステップが一番大事だろう。
つまり、 距離=速度×時間。 である。
この場合その式を二つ足した形だ。

自転車の速度 a 時間 x
歩く  速度 b 時間 y とすると、
  ax+by=5  という簡単な式になる。

このことに気づけるかどうかが、最大のポイント。*2
しかし未知数が4つもあっては方程式は解けない。 結論をいうと、
/ 12x+4y=5  
\ x+y=1   という連立方程式になる。
これは息子の問題だったのですが連立方程式はまだ習っていない。
最初から  12x+4(1-x)=5 という式を頭の中で作らないといけない。
これは難しい。(しかも整数の範囲内では解けない。)
数学嫌いの多くはきっとここら当たりでつまずいてしまったのかもしれない。


(英語は出来ないが英語や英語文化にあこがれる人は多い。数学は出来ないが数学文化にあこがれる人は少ないが居ないわけでない。)
上の問題でごちゃごちゃ書いてある関係が、そしてそれと同じような無数の問題が「ax+by」というたった5字で表現できるということへの驚きと便利さ! というものはもっと共有されてよいと思う。

*1:分速に直そうとしても4/hは分速に直せない。

*2:中学受験の勉強をした人は、上の式の構造に気がつくことができる。