松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

苦しんでいる子供たちのために金正日を助ける

わたしの参加している“受け継ぐ会”MLで、『「戦争につながる経済制裁をせず、拉致問題を平和的に解決すること、そして日本が植民地支配の責任を果たして日朝の国交正常化を実現することを政府に求める共同声明」賛同のお願い』という長い題のお願いが流れた。下記にあるのと同じものだ。
http://www1.jca.apc.org/aml/200311/36622.html ( 15 Nov 2003 )沢田ひで子氏の表現のようだ。
このような趣旨の発言は以前もあったように思う。いまごろの「左翼」のなかではこれに反対するのは少数派なのかなあ、と疲労感を予め感じてしまい、そのときは反応しませんでした。別の事情もあったので今回短い応答をしてみました。下記に貼ります。

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YYさま はじめまして。 野原燐といいます。
北朝鮮への経済制裁に反対する声明」についてのメール読ませていただきました。 経済制裁については申し訳ないけれど是非についてはっきり意見を言えません。また学んでいきたいと思います。ただ以下の点について、意見、質問を持ちましたので僭越ですがメールさせていただきます。わたしは「救う会」周辺の一部が偏狭なナショナリズムをあおり立てていることを大変不快に感じています。しかしこの声明は「彼ら」(あるいは)「(好戦的な)アメリカ」「(反省をしない)日本」といった大文字の敵がまず措定されていて、それに対抗するためにはどうするか、という二項対立図式が全てを支配しています。この図式の中では「金正日政権の悪」というものは、たとえ在ったとしても、どこにも位置づけようがなく結局無視されてしまいます。大なり小なり苦しんでいる北朝鮮人民の立場に想像力を及ぼすこと、から最も遠い営為になってしまっているのです。
1.「拉致問題を平和的に解決すること」がまず考えられなければならない大事なことなのでしょうか。拉致問題が大事な問題であることは確かですが、それと同じように大きな問題は日本−北朝鮮間にたくさんあります。一つは、1959年からの帰国事業で北朝鮮に帰っていった約9万3千人の人々です。もちろん現在も北朝鮮国内で元気に活躍されていることが確認できる方も多いのですが、一方連絡がつかなくなった方も多いのです。その中には強制収容所に入れられている方や飢えから逃れるため国境を越え中国に潜んでいる方など緊急な援助を必要とする方もいます。後者の問題に目をつぶり拉致問題から発想するのはバランスを欠いていると思います。
2.>>>>今、「北朝鮮」には、食糧不足のため、栄養失調に苦しむ子どもたち、その果てに死んでいく人々が多くいます。その「北朝鮮」に物やお金が入らないようにする、封じ込める経済制裁をおこなったら、いったい、どのような事態になるのでしょうか。<<<<
アマルティア・セン氏の研究によれば、大量の餓死者の発生の原因は、その国家全体の食糧不足によるというよりも、分配の不公平性(を是正できない権力の遍在)による、ということです。伝えられているように1995年以降、約200万人(以上?)もの餓死者が出たとするなら、その原因を「食糧不足」という一見ニュートラルな言葉に求めるのはかえって誠実さを欠く態度ではないでしょうか。その責任が金正日政権にあると考えるのが妥当でしょう。「いったいどのような事態になるのでしょうか」と書かれていますが、「経済制裁無しで大量餓死者が出たのかそうでないのか?」事実認識をまず確認しておかないと、議論がはじまりませんね。
3.金正日政権打倒を唱えるのはいけないことなのでしょうか?
4.>>>>しかし、それは、日本が、その植民地支配責任を果たすものとしてある日朝国交正常化を実現していく中でこそ、解決に向けた道が再び開かれてくるものだと思います。拉致の事実を一切認めてこなかった朝鮮民主主義人民共和国政府が、初めてこれを認め、謝罪し、解決の方向に大きく動き出したのも、日朝の国交を正常化することを前提とした交渉と会談の中においてのことでした。<<<<
「日朝国交正常化」は金正日政権にとってその政権の延命のために行われます。したがって、「日本が植民地支配責任を果たす」といってもそれは建前だけで良く、要は政権に膨大な援助が入ればそれでいいのです。そんなことでは、北朝鮮人民への責任を果たした事にもならないし、日本人が加害責任に向き合うことにも繋がりません。5.>>>> 日本が、それら植民地支配によって朝鮮の人々に与えた被害に対する責任を果たすことによって、日朝間の正式な国交関係を結び、国交正常化を実現することは、植民地支配をした日本の側の責務です。<<<<
 繰り返しますが、「日朝間の国交正常化を実現する」という手段によっては、「日本が、それら植民地支配によって朝鮮の人々に与えた被害に対する責任を果たす」ことはできません。国家と国家の間のボス交によって巨額の金銭が行き来するだけです。               野原燐
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