松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

松林要樹氏の映画「花と兵隊」

松林要樹氏の映画「花と兵隊」を見た。
http://www.hanatoheitai.jp/
http://d.hatena.ne.jp/motokiM/ 松林さんのブログ
インパール作戦を含むビルマ戦線では、約33万人の日本の将兵が送られ、そのうち約十九万人が亡くなった。
ふつう死者として数えられる人の中には行方不明者も入っている。
極限状態において軍隊はその規律を失う。命令を受けるべき上官と連絡が取れなくなる。敗戦とはこのような極限状態の全面化であると考えることもできる。しかし極限状態は長くは続かない。破れたのにも関わらず軍隊組織は(勝者の管理下において)軍隊組織は生き残る。末端の兵隊は再びそこに所属することになる。しかしそのときそこに復帰することが物理的に、心理的にできなかった者もいる。組織に帰還しながらふとした機会にまたそこから離脱したケースもある*1 
この映画は6人の高齢の元兵士たちを扱っている。ビルマ戦線で戦った兵士たちだ。理由はともあれ彼らは日本に復帰せず現地で生活の基盤を築き伴侶を獲得する。日本という虚名を捨て目の前にいる女性を選んだ、そう語れるわけでもないかもしれないが。彼らが日本を捨てたとしても社会は彼らを日本人と見ているわけであり、ビルマ人から彼らは敵視される。少数民族カレン族の部落に逃げ込み別の少数民族パオの女性を妻にする。*2
大東亜共栄圏というものをいくらかでも庶民の立場から考察しようとするなら、すぐに少数民族の存在につきあたる。平和というものを国家と国家の間の平和としてだけしかイメージできない人々はついに歴史の表層を撫でるだけである。


とても高齢になった元皇軍兵士たち。彼らには緑に包まれた生活があるだけであり、過去の戦争はもはや悪夢として襲ってこない。彼らは60年以上をかけて支払いつづけてきたのだから。
一方、わたしたちの国家はどうか。ささいな利権をもつ少数者の影響力のために*3アウンサンの名を持つ女性を見殺しにしつづけて恥じない「わたしたちの国家」は!


「何故帰って来なかったのか?」という問いを軸にこの映画は構成された。しかし彼らの生はこの問いの根拠を問いかえし、根拠が存在しないことが明らかになる。


七芸 でも上映中。http://www.nanagei.com/movie/schedule.html


恋するカレンも良いが戦うカレンも! http://www.youtube.com/watch?v=d18gHkiO4-U

カレン(克倫 Karen)とは?

ミャンマービルマ)およびタイに居住する民族。いわゆるカレン人には、広義のカレンと狭義のカレンとがある。広義のカレンには、カレン諸語を話すすべての民族が含まれ、その代表的な民族集団としては、スゴー・カレン(Sgaw Karen)、ポー・カレン(Pwo Karen)、ボエー・カレン(Bwe Karen)、パオ(Pa-O)、カヤー(Kayah)、パダウン(Padaung)などがある。
普通は、スゴー・カレンとポー・カレンのみをカレンと呼ぶことが多い。
人口約300万。
生業形態としては、山地のカレン人には今なお焼畑農耕が残り、平地のカレン人には水稲耕作が広く行われている。
ミャンマーの植民地時代、イギリスはカレン人を優遇して積極的に官吏や警察官として登用した。このことはビルマ人とカレン人の間の溝を深めることにつながり、1949年に始まるミャンマー政府に対する武力闘争の一因となった。
スゴー・カレン語にもポー・カレン語にも独自の文字がそれぞれ複数種類あり、
http://www.sfs.osaka-u.ac.jp/user/burmese/karenpeople.pdf からの抜き書き

 ビルマに住むカレン人の一部は、ビルマ独立直後の1949 年以降、尖鋭的な反政府武力闘争を行ってきました。その主導権を握ってきたのは、キリスト教徒のカレン人たちです。このことが、ビルマ政府に反抗するキリスト教徒カレン人というイメージを作り上げました。

 一方、ビルマとタイの国境地帯に広がる山岳地帯に住むカレン人には、近代文明から距離を置いた、昔ながらの素朴な生活を続けている人たちが少なくありません。この人たちは主に、先祖から受け継がれた神や、自然物に宿る精霊を信仰しています。北タイではこのような少数民族の存在そ
のものが観光資源となっており、

 さて、この二つのイメージからは、ビルマの平地に住む(仏教徒の)カレン人のイメージがすっぽりと抜け落ちてしまっています。
http://www.accu.or.jp/archives/jp/profile/accunews/news344/344-01.pdf

(9/5追記)

*1:この映画の元兵士たちはほとんどそうだったようだ。

*2:坂井勇、中野弥一郎の場合。

*3:たぶん