松下昇への接近

 旧 湾曲していく日常

ビルマの僧侶たちの不受布施

僧侶による軍政への不受布施(鉢伏せ行)が始まる。当局は催涙ガスを使用

イラワディ
2007年9月18日

 旧首都ラングーン(ヤンゴン)などビルマミャンマー)各地では18日、仏教僧侶が、かねてからの警告通り、軍事政権のメンバーとその家族からのお布施を受け取らない行動を開始した。アラカン州(ヤカイン州)州都シットウェーで行われた僧侶と市民のデモは、当局が催涙ガスを用いて強制解散させた。

 ラングーン中心部とバゴー(ペグー)では数百人の僧侶が2?3列縦隊で静かに市内を歩いた。マグエー管区ではパコックなどで同じ動きがあった。僧侶は慈悲経と護経(パーリ語の代表的なお経)を唱えながら、地元の寺院に向けて行進した。

 目撃者によれば、シットウェーでのデモでは治安部隊が数百人の僧侶と市民に対して催涙ガスを使用し、デモを強制解散させた。僧侶によるデモには住民数百人が加わっており、ムスリム住民の姿もあったという。

 ロイターによれば、シットウェーでは当局が催涙ガスを用いた際に僧侶3?4人を拘束した。デモ参加者が暴行を受けたとの目撃情報も報じられた。

 18日の抗議行動は、僧侶によるものとしては1988年にビルマ全土で起きた民主化運動以来最大の規模である。当時は数千人の僧侶が運動に加わった。

 今回の不受布施(鉢伏せ行)とは、僧侶の側から、信者である軍政の関係者や家族との関係を断ち切ることを意味しており、実施されるのは1990年以来である。推計40万人の僧侶の大部分が追随すると見られている。18日遅くには、この行が拡大しているとの報告があった。

 今回の動きは僧団(サンガ)と国との間の重大な対立であり、軍政当局にとって深刻なものだと受け止められている。ビルマ国民の大多数は、軍政指導部のほとんどもまた、仏教徒である。

 鉢伏せ行は早朝3時から、バゴー管区のジョビンガウ、マグエー管区のアウンランとパコック、その他ラングーン管区とマンダレー管区の複数の町で開始された。

 数千人が僧侶の行進を歓声で出迎えた。

 「こんなにたくさんの人が集まったのを見るのは生まれて始めてだ」と、デモを見たバゴー管区の住民はイラワディの取材に話し、10万人くらいの人がいたと思うと述べた。バゴーでのデモには僧侶約千人が参加している。

 またこの住民は「お坊さんが住民の幸福のために立ち上がるのを見て、うれしさと悲しさがないまぜになっている。お坊さんが暴力によって弾圧されないか大変心配している」と述べた。

 1990年10月に軍政からの寄進の受け取りを拒否した僧侶は、当局から厳しい弾圧を受けた。多くの僧院があるマンダレーでは、寺院130カ所以上が捜索を受け、僧侶は強制還俗させられ、長期の刑に処せられた。ビルマ全土では僧侶300人が強制還俗させられ、逮捕された。(訳注)

(訳注)軍政は弾圧直後に「サンガ(僧団)組織関連法」を成立させ、仏教界の統制を強化した。最近では2003年11月にラングーン管区の僧院で見習僧26人が逮捕される弾圧があった(政治囚支援協会:『僧侶が還俗させられ、投獄される国』の紹介と、報告書本体(未邦訳)を参照)。

 シットウェー以外では、デモ参加者に対する当局側の行動は伝えられていない。バゴー管区ジゴンでは、軍政のトップ3を名指しした「タンシュエ、マウンエイ、シュエマン 仏教の教えに背く者、地獄に堕ちろ」というプラカードが目撃されている。

 目撃証言によれば、行進に参加した僧侶は統制がとれており、支持者や見物人がデモに参加することを認めなかった。また、騒ぎを起こし、当局の弾圧を正当化するために偽僧侶が送り込まれているとの噂が広まっている。

 8月と9月前半に行われたデモでは、軍政は暴漢を動員し、参加者を暴力的に解散させている。

 観測筋によれば、これから不受布施の動きが広まっていくことで、軍政側は高僧に対して監督下の僧侶を監視するよう説得に回ると見られる。軍政高官と閣僚はこのところ、異例の信仰心の厚さを見せ、功徳を積む行為を繰り返している。

 ミンジャンのコーサウン寺院の高僧は抗議行動について「これこそまさに我々僧侶がすべきことだ」と述べた。

 全国僧侶戦線のメンバーはインタビューで「これはダンマとアダンマ(正と不正)の戦いである」と述べた。【了】

出典:'Monks March as Boycott Begins?Authorities Use Tear Gas', Irrawaddy, September 18, 2007 at http://www.irrawaddy.org/article.php?art_id=8647


参考:1)民主主義の約束は果たされなかった。

ビルマ軍事政権は、1988年の民主化運動の後、国内に民主主義を実現するという約束を反故にし、軍事独裁政治を続けています。軍政と、僧侶や学生、ビルマ国民との争いは絶えることはありません。
法を無視する独裁政権により、今のビルマは、政治的に不安定で、内戦を抱え、経済発展が遅滞し、生活水準は低く、医療や保健、教育は劣悪な状況に陥っています。
3百万人を超える人々が隣国に逃れざるをえない状況が存在しています。
民主主義を求めて声を上げた人々の多くが投獄されています。
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/7f76c3abc3f0d4f85424896de29a0aac

2)8月からの反軍政運動

こうした抑圧的な状況下で、ビルマ国内の学生と国民の間で、軍政に反対する動きが2007年8月第1週から始まっています。
それまで教学に励んでいた多くの僧侶たちが、人々の苦しい生活を理解し、支持を表明して、抗議行動に参加しています。
ビルマ全土には約40万の僧侶がいます。したがって僧侶の運動は全国に波及しています。

2007年9月5日、ビルマ中部のパコック市内で僧侶たちが平和的な行進を行っていたときのことです。デモを解散させようとしたビルマ国軍は、投げ縄を使って僧侶たちを捕まえ、街灯に縛りつけて殴りつけ、逮捕連行し、強制的に還俗させました。8人の僧侶が未だに釈放されていません。
政府によるこうした非道な行いに対して僧侶は謝罪を求めました。また同時に、逮捕された僧侶をすべて釈放すること、物価高騰への対策を講じること、対話によって政治問題を解決することも求め、回答期限を9月17日としました。


軍事政権の独裁的な指導者たちはこの要求に応じることも歩み寄ることもなかったため、ビルマ全土の僧侶は9月18日に、教えに基づく覆鉢(鉢伏せ行、パッタムニックッジャナカンマ)を行いました。そして全国の街頭を行進して、抗議の意志を示しています。(同上)

3)釈尊の名において

釈尊は私たちに次のように説いています。もしこうした抗議の話を聴く、もしくは知ったなら、それがどんなに離れた地域のことであっても、あるいは法臘の差に関わらず、また大乗か上座かを問わず、僧侶たちは皆、仏教を護るためにこの行動に加わるべきである、と。したがって覆鉢行は広く世界的に行われています。

以上の理由から、私は日本に住む僧侶、尼僧、在家信者の皆さんに対し、ビルマの僧侶たちが現在取り組んでいる行動に注目され、共に実践してくださることを強く求めるものです。(同上)

追記:
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20070923k0000m030099000c.html

私は武装抵抗を否定するものではない。しかし非道な権力に対しても武器を取り立ち上がることは、場合によっては流血の惨事がいつまでも続くことになり限りなく悲惨である。非暴力の抵抗運動に国際的に注目し支援していくことは必要なことだと思う。